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アメリカで流行する神出鬼没のグルメビジネス
「フードトラック」と「ポップアップ料理店」

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第147回】 2011年6月2日
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 ここアメリカでは、最近のフードまわりの流行語は、「トラック」と「ポップアップ」である。「トラック」とは、その名のとおり、トラックで販売する軽食屋のこと。トラックの荷台の部分が特別な仕様になっていて、内部で調理し、側面に開いた窓から販売する。ランチワゴン屋台といえば、日本人にも馴染みがあるかもしれない。

 このフードトラックが今、全米でかなり盛り上がっているのだ。

 以前は、フードトラックと言うと、ファーストフード、つまりホットドッグやタコスのたぐいが多かった。お手軽で値段も安いが、お味はちょっと……、というカテゴリーのものだ。まあ、その時の空腹を満たすものだから、あまり期待を高く持つのも筋違いというものだろう。

 ところが、そのフードトラックが今、大きく変わりつつあるのだ。グルメ料理が増えているのに加えて、シェフや起業家が自分の料理の腕とビジネスセンスを試す面白い舞台となっている。

 たとえば、サンフランシスコには、「オフ・ザ・グリッド」と名づけられたフードトラックに料理を提供するシェフたちのグループすらある。「オーガニック・コリアン」とか「グルメ風グリルチキン」「ストリート風ルイジアナ料理」「カレーソーセージ」「飲茶」「かき氷ナチュラルソースがけ」など、ちょっと聞き慣れない名称の料理、創作度の高い料理が数多く提供されている。有名レストランで腕を磨いた若いシェフが自らフードトラック・ビジネスに乗り出しているケースもある。

 筆者がよく訪れるサンフランシスコ市内にも、フードトラックがあちこちに出没する。昼時に道路がいやに混み合っているなと思ったら、フードトラックが5~6台もビル影の路上に停まっていて、ランチを買おうとする人びとでごった返していたりする。

 フードトラックは、週日はネット企業のオフィスが多いサウスマーケット付近や、公務員や観光客の多いシビックセンターあたりで営業しているが、金曜日や土曜日の夜になると、ゴールデンゲート・ブリッジを臨む公園に30台以上ものトラックが勢揃いし、まるで夜店が集まる日本の夏祭りのような雰囲気を醸し出している。

 売る人も買う人もツイッターなどのSNS(ソーシャルネットワーク・サービス)を駆使し、トラックの場所を伝え合ったりしているあたり、非常に現代的な食の現象と言える。肩肘をはらず、自然発生的なのだ。歩道に思い思いに座って、食事をしているビジネスマンを見ていると、昼食を食べながら会議をする「パワー・ランチ」ブームも過ぎ去ってしまった感じだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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