キレるのは別の理由
無意識に相手を探している?

 次に「人が怒る理由の9割は別の理由だ」という点がある。

 たとえば、サラリーマン中高年にとって、“かわいい後輩”と“いけすかない後輩”がいるとする。かわいい後輩が遅刻しても、「しょうがねえなあ」と思う程度だ。しかし、いけすかない後輩が遅刻すると、「あのバカ、なに遅刻してるんだ」と腹が立つ。つまり、後輩の“遅刻”という出来事自体は、怒りとは関係がない。いけすかない後輩を怒るためのアラを日頃から秘かに探していて、それ見えた瞬間、「待ってました!」とばかりに怒り、キレるわけだ。

 山下院長は「キレる人の心には、怒っても反撃できない人を見つけると『チャンス!』となり、その相手がミスなどをした瞬間『オレの日常の怒りをぶつけよう!』といった無意識の構造が働いています。それで駅員や窓口の係員、子どもなどにキレるわけです」(同前)

 確かに、駅員にキレる中高年も、ヤクザがどんなマナー違反をしたからといって、キレたりしないだろう。

「それはヤクザを見ても『チャンス』とはならいからです。つまり、不安の強い人は、本人の中の無意識が、キレる相手や理由を探しているのです。そして、そうした心の動きについて、人は自分では気がつくことができないのです」(同前)

 最後に「怒りは自己紹介である」という点だ。

「他人の遅刻に厳しい人は自分も遅刻魔なんです。後輩の服装に厳しい人は自分が若いときに服装がだらしなく注意されていますし、『空気読め』が口癖の人も同様で、自分はどこか空気を読めていない人だと思っています」

 なにか逆さまにも見えるロジックだが、ここにも人間心理の微妙なアヤがある。

「そもそも『自分は空気を読むことが苦手』というコンプレックスがなければ、空気を読む、読まないということに、意識のアンテナが立たない。そして、そんな人は 空気を読めてない人を見つけて怒ることで、『自分は空気を読めている』と安心したいのです。つまり、駅員さんに『仕事をちゃんとしろ』とキレる人は、『自分は仕事をちゃんとしていない』と心のどこかで思っているのです」(同前)

 この3つのどれか、もしくは複数が、中高年が公共の場にもかかわらず、突然キレてしまう理由だという。では、どうしたら“キレない中高年”になれるのか。