全米で話題沸騰中の21の睡眠メソッドを集約した、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』。本連載では同書の中心的なメソッドを紹介していきます。食事、ベッド、寝る姿勢、パジャマ――。どんな疲れも超回復し、脳のパフォーマンスを最大化する「睡眠の技術」に注目です!

なぜスマホをアラームにしては絶対にいけないのか

スマホを寝室においてはいけない

携帯電話、テレビ、デスクトップパソコン、ノートパソコン、iPad、キンドル、タブレットPC……。寝室を小さな家電ショップに変えている人は多い。このことが、健康をどのように脅かすのか? そして、睡眠にどのような影響を及ぼすのか?

携帯電話会社が自ら依頼した調査から、寝る前に携帯電話で話すと深いノンレム睡眠の段階に達するのが遅くなり、深い睡眠の時間が短くなることが明らかになった。つまり、回復力、免疫機能、ホルモン機能が低下し、翌日の頭や身体の働きが悪くなるのだ。

英国レスターシャー州にあるラフバラー大学の研究チームが、携帯電話から出る放射線が人間の脳に与える影響を調べた。被験者の頭に携帯電話をくくりつけ、コンピュータで携帯電話のオン/オフを操作しながら脳波を脳波計で測定したのだ。

すると、電話が「通話モード」(電話がかかってきたときの状態)になると、電源が切れて1時間以上たってもデルタ波はあまり動かないままだった。デルタ波は、深い睡眠のいちばんの指標となるものだ。睡眠において、深い睡眠の段階は重要な役割を担うので、この睡眠が阻害されれば睡眠効率に大きく影響する。だからこそ、この脳波を観察したのだ。

被験者は眠るようにと指示されたが、電話の電源が切れた後、寝つくまでに普段の2倍の時間がかかった。深い睡眠に入ることができたのは、携帯電話から出る放射線の影響が脳波に見え隠れしなくなってから1時間がたった後のことだった。

つまるところ携帯電話におやすみのキスをして枕元に置くことで一日を終わらせれば、その先には失敗が待ち受ける。なぜなら、携帯電話で最後にしたことが頭に残るので、翌日に何がやりたいかといったことは頭をよぎらないからだ。それに、携帯電話の画面から出る光のスペクトルは、日中に分泌されるべきホルモンの分泌を促すので、眠っているはずの時間に分泌されるセロトニンの分泌に遅れが生じ、量も減少する。

携帯電話には便利な機能がたくさんあるので、アーミーナイフのようにさまざまな用途で活用している人は多い。アラーム機能もその一つだ。携帯電話をベッド脇に置きたい誘惑にかられたくないなら、本物のアラーム時計を使うようにすればいい。

ブルーライトを抑える機能のついた時計でもいいし、昔ながらのベルが鳴る時計でもいい。なんなら、雄鶏を目覚まし代わりにしたってかまわない。とにかく、不必要な携帯電話の使用はやめよう。
 

勉強、セックス、睡眠……
電子機器が生活のクオリティを左右する

携帯電話や電子機器を、心の友のように扱う人は多い。そういう人は、文字が入力できる距離に携帯電話がなかったら倒れて死んでしまう、といった態度を見せる。安心してほしい。携帯電話がなくても死にはしない。

先ほどの教訓を無視すれば、残りの人生はあまり楽しくならない。だから、電子機器は寝室から追いだそう! 睡眠が大事なら、必ずそうするはずだ。病気をしない健康な身体になることが大事なら、そうするはずだ。テレビもノートパソコンも携帯電話も、睡眠を阻害する放射線を発する。そういうものを使う場所を家のなかで決めて、そこだけで使うようにしよう。寝室は、睡眠とセックスのためだけの部屋だ。

寝る前にテレビを観ると、睡眠サイクルが乱されるという研究結果は山のようにある。
ベッドでテレビを観るのはごく普通のことだと思うかもしれないが、そのあいだ、脳の一部は花火のように激しく光っている。つまり、脳と身体にストレスを与えているということだ。それが就寝時間の近くなら、その影響はいっそう強い。自室にテレビのある子どもは、試験の点数が低く、睡眠に問題を抱える傾向が高いというデータがある。それだけではない。部屋にテレビがあると、肥満になるリスクも格段に高まるという。

では、ママとパパへの影響はどうか? イタリア人カップル523組の性生活を調べたところ、寝室にテレビのないカップルがセックスした回数は、テレビを置いているカップルの2倍だった(これを読んで寝室からテレビを放りだす人はかなりいると思う)。

寝室にテレビがあるとセックスの回数は半分になると述べたが、50歳をすぎたカップルに限定すると、テレビの存在がより顕著に回数の減少に反映される。性生活が充実するというだけで、ほとんどの人にとってはテレビを追いだす十分な理由になるはずだ。この事実を知った後で誰かの家の寝室でテレビを見つけたら、きっとショックを覚える。寝室に入ってテレビを見つけたとたん、胸に手をあてて息を飲み、「まさか、まだテレビを置いている人がいたとは……」と思わずつぶやいてしまうことだろう。

電子機器はセックスにも影響を及ぼす。不妊や生殖障害を中心に扱う学術誌『ファーティリティ・アンド・ステリリティ』に、ノートパソコンを使ってワイヤレス環境でインターネットに4時間接続した状態でいると、精子の運動率の著しい低下を招き、精子DNAの断片化が進むという研究報告が載っていた。生殖細胞の健康と先進技術は、あまり相容れない(自分は未来からきたロボットだというなら話は別だが)。

毎日当たり前だと思ってしていることが、実は私たちの身体や生き方に大きく影響するということを忘れないでほしい。寝室に電子機器を置くことは、睡眠と身体に対する第一級殺人罪も同然だ。だから、いますぐ行動を起こそう。身体のことを尊重し、寝室から電子機器類をすべて追いだすのだ。身体が喜ぶ条件を一つひとつ満たしていけば、それに見合った睡眠を得られる環境が整っていく。