「統合政府」で考えれば、政府の財政再建試算は3年早まる

 筆者は、本コラムで再三にわたって、統合政府の考え方を取り上げてきた。2月23日付け『日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている』や4月6日付け『報道されなかったスティグリッツ教授「日本への提言」の中身』などである。この「統合政府」という考え方は、財政・金融問題を考えるとき、政府と中央銀行を会計的には一体としてとらえるもので、一般企業においてグループ企業は連結決算で考えるのと同じである。

 この思考法は具体的な財政問題を考える上でも重要である。今回は、日本の「財政再建」問題を考える際にしばしば参考にされる「中長期の経済財政に関する試算」(以下、「中期試算」という)を取り上げてみよう。

財務省の思惑を排除
小泉政権で始まった中期試算

 この試算の性格については、「本試算は、経済財政諮問会議の審議のための参考として、内閣府が作成し、提出するものである」と表紙に書かれている。年2回公表されており、7月頃に出されるものは、翌年度の予算に基本的な方向を決めるための基礎データを提供している。

 もともと、この試算が出されるようになった経緯は、当時、経済財政担当の大臣だった竹中平蔵氏が小泉政権の時に始めたものだ。竹中氏は、予算作成の際にマクロ経済事情がほとんど反映されずに、旧大蔵省内での予算査定作業で予算が決まっている状況を批判し、次年度の経済見通しを経済財政諮問会議で決め、その下で予算の基本方針をこれも経済財政諮問会議で決めようとしていた。後者がいわゆる「骨太方針」であった。