財政再建は将来世代への責任 <br />産業振興に政官財の危機感求むソフトバンクグループの孫正義社長が約3.3兆円での英半導体メーカー買収を決断したのは、IoT時代を見据えての戦略。政官財一体で産業の行く末を真剣に議論する必要がある Photo by Takahisa Suzuki

 日本の財政赤字は2020年代後半から本番を迎える。団塊の世代が後期高齢者になると、国庫の医療費負担が急増する。他方で、税金を担う現役世代の人口は減少を続ける。

 労働年齢(20~64歳)人口は2000年からの半世紀で36%も減ってしまう。今から30年ほどで労働年齢人口に対する高齢者(65歳以上)の比率は80%に近づく。

 未来の若者に国債という借用証書を安易に押し付けるのを避けるためにも、われわれは財政問題を直視する必要がある。しかしながら、「政府には資産があり、それを差し引けば政府の借金を心配する必要はない」との主張が時折聞こえる。

 本当だろうか。財務省が1月に発表した昨年3月時点の「国の財務書類」によると、負債は1193兆円であり、資産は672兆円だ。負債から資産を差し引いたネットの負債は521兆円。ネットで見ても負債の国内総生産(GDP)比は先進国の中で最悪だ。