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「引きこもり」するオトナたち

震災当日から無償で心のケアを開始
カウンセラーが見た被災者の3月11日と今

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第70回】

津波の犠牲になった多くの当事者たち
未だに安否確認できない人も多数

 宮城県石巻市に住んでいた20歳代の引きこもり男性は、津波に家ごと流されて、亡くなった。

 男性は、それまで長年、部屋にこもりきりだった。

 毎日、母親が食事をお盆に乗せ、彼の部屋の前に運んだ。しかし、食べるとすぐに吐き出した。彼は家族が誰もいなくなると、家の2階にあるトイレに入った。

 着替えるのは、年に1度か2度。風呂には、4年ほど入浴していなかった。

 宮城県塩釜市で、カウンセリングのためのCafe「森遊」を営むカウンセラーの蜂屋美子さんは、そんな彼とメールのやりとりによって会話を続けてきた。彼の母親のカウンセリングも行ってきた。

 そのうち、彼は部屋の外に出てきた。家の中では、外のお客がいなければ、少しずつ過ごせるようになった。

 「父親の仕事を手伝いたい」

 そんな目標まで口にするようになった。

 しかし、あの日、自宅に1人きりでいた彼は、家から逃げることができず、津波に襲われた。

 両親は、内陸部の会社にいたので、無事だった。彼が亡くなる直前、どのような行動をとったのかはわからない。

 ただ、彼の遺体は、ネットの安否情報で探して、見つけることができた。

 他にも、蜂屋さんがカウンセリングしていた引きこもりの人たちは、石巻市や東松島市、南三陸町など、津波の被害の大きかった沿岸部の居住者が多く、亡くなった当事者が何人もいる。しかし、震災後、連絡が取れていないため、そのときの状況はわかっていない。

 蜂屋さんが、東松島市に住む、ある20歳代の当事者の自宅を訪ねてみると、家は跡形もなく消えていた。携帯にかけてみると、「電源が入っていないので、かかりません」のメッセージが流れる。

 一体、どうしているのか。安否確認はまだできていない。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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