「選挙の年」欧州の現地で聞いた政治の行方と次の注目ポイント英金融街シティから機能の一部移転を決める金融機関が増える中、それに逆行して続々と建設されている高層オフィスビル Photo by Izuru Kato

「選挙の年」を迎えている欧州に出張中だ。そこで、各地で聞いた今後の政治上の注目点を整理してみよう。

 フランスでは5月7日、大統領選挙の決選投票でエマニュエル・マクロン氏が勝利した。そして、早くも目先の関心は来月の議会選挙に移っている。新大統領が経済改革案を推し進めるには、彼の政治運動組織「アン・マルシェ(前進)!」がどの程度議席を獲得できるかがカギとなるからだ。

 フランソワ・オランド前大統領の経済政策は、フランス国民に失望された。もし、マクロン氏も今後2~3年で失望されれば、金融市場は相当早い時期から、2022年のマリーヌ・ルペン大統領誕生を織り込み始めるだろう。ただ、実現には彼女がより現実的な政策を取り込む必要があるという指摘もフランス・パリでは聞こえる。

 次にドイツだが、今年9月に行われる総選挙の結果を心配する声は少なくなっている。最近の地方選挙で与党・キリスト教民主同盟(CDU)が勝利したこともあり、アンゲラ・メルケル首相に対するドイツ国民の支持は、一時懸念されたほど悪化していない。

 問題はイタリアだ。4月29日、民主党の党首選挙において、マッテオ・レンツィ前首相が6割を超す支持を集め、党首に返り咲いた。今後、彼は反欧州連合(EU)を掲げる野党・五つ星運動と闘う。最近の世論調査では、両者の支持率は拮抗している。

 総選挙は遅くとも来年末までに、早ければ来年前半にも実施される。もし、お笑い芸人のベッペ・グリッロ氏が率いる五つ星運動がイタリアの権力を握れば、「笑っている場合ではなくなる」という懸念の声が市場関係者から聞こえた。