「みずほに(融資を)引かれたのが痛かった」

 13日に民事再生法適用を申請した不動産会社、アーバンコーポレイション関係者は、こう本音を打ち明ける。多くの取引銀行がメインバンクの広島銀行に融資の肩代わりを求める「メイン寄せ」が起きていたが、その引き金をひいたのが、ほかならぬみずほ銀行だったというのだ。

 アーバンだけではない。みずほ銀はグッドウィル・グループのメインバンクだったが、違法派遣が問題化するやいなや貸出債権約1000億円を外資系ファンドに売却して手を引いた。同じくメイン先だった不動産会社のスルガコーポレーションからも融資を引き揚げ、息の根を止めた。みずほ銀の「縁切り」は素早く、容赦ない。資金繰りが厳しい不動産業界関係者のあいだでは「みずほ銀ショック」とささやかれ、動揺が広がっている。

 みずほ銀の融資姿勢が一変したのは、全行の融資を管理するクレジット委員会の委員長が小崎哲資副頭取に代わった昨年秋からだ。小崎副頭取は不動産業界などに対する融資を適正水準まで絞るようにトップダウンで指令を下した。

 行内には、「小崎さんの決断は合理的」(みずほ銀支店長)という声がある一方で、長い年月をかけて築き上げてきた取引先との関係を問答無用で断たれることに対する不満も根強い。みずほ銀の顧客基盤は旧富士銀行と旧第一勧業銀行の取引先であり、「(旧日本興業銀行出身の)小崎さんに現場の機微がわかるはずがない」というわけだ。

 銀行が取引先から融資を引き揚げるということは、時に死刑宣告を下すに等しい。焦げつきを防ぐためにはやむをえないとはいえ、メインバンクと取引先の信頼関係を壊しかねない融資回収は中長期的には自らの首を締めることになりはしないか。

 一連の倒産劇を通じて、メインバンクの存在意義が問われている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 津本朋子)