なぜ、娘を置いてパリへ逃避行?

 出産前に200冊も教育関連本を読んで、準備万端!
 子どもは全般に大好き、まして自分の子どもはなおさら好き。
 生まれて顔を合わせた瞬間に大感激、いつまでも乳児の匂いに包まれてぼおっとしていたい。

 ゼロ歳から日・英・仏の3ヵ国語で話かけ、夜なべしておもちゃを手づくりし、オリジナル絵本を創作するために慣れないイラストの練習をして、ちょっとでも子どもの体調が悪そうだと心を痛め……。
 そんな私でも、瞬間的になっちゃうんです。

「子育てに没頭していると、自分がなくなるようで怖い」

 それは、娘が1歳のときでした。
 小さくてふわふわした姿も愛らしいし、お話もするし、かわいいさかりです。
 そんなことはわかっているのですが、
 ある日、なんと私は、ふと気づくと、パリ=シャルル・ド・ゴール空港にいました!

 娘は、自分でいろいろ手はずをして、家族でも親戚でもなんでもない、いわゆる赤の他人のご家族に預けました。
 遠慮して家族に預けなかったのです。
 すでに思いつめていますね、私。

 さあ、これで瞬間的に独身に戻れた。
 おしゃれして、おいしいものを食べて、ワインを飲んで、最新の文化情報に触れて、芸術を鑑賞して、さらに、旅をして、人に会って、自分を成長させて、と子育てからサクッと解放されたいモードに入っていたのです。

 ですが、実際、パリでやったことは、ひたすらかわいい娘のために、かわいくてレアな服を探し歩く、日本にないタイプのすてきなおもちゃを探し歩く、フランス語習得に役立つ絵本を探し歩くと、娘のことで頭をいっぱいにしてパリ中を歩いたのです。
 まあ、そんなものです。