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トヨタvsホンダのハイブリッド車バトル、夏の陣が始まった。
トヨタはプリウスαを5月に、ホンダは6月にフィットシャトルハイブリッドを発表。これまでハイブリッド車といえば、セダンが主流だったが、両社とも初の実用的なワゴンタイプ投入にかける。
さらに、プリウスαは高出力のリチウムイオン電池を初採用、3列シートタイプもラインナップに加えた。また、ホンダはミニバンのハイブリッド車も発売すると明言。この夏以降はより多様なハイブリッド車が続々と投入される。
日本ではすでに地歩を築いたハイブリッド車だが、世界全体で見ればシェアは1%前後。ハイブリッド車バトルの場は、徐々に海外市場に軸足を移していくことは間違いない。その動きは日本の自動車産業の生産のあり方をも大きく変える可能性がある。
メーカー各社は現時点では、付加価値の低いクルマは部品を含めて海外で生産しつつも、最先端の環境対応車やその基幹部分は日本で生産するという棲み分けを維持している。
実際、トヨタはプリウスαの欧州、米国での月間販売目標を各2000台とするが、すべて日本からの輸出で賄う。また、トヨタもホンダも一部ハイブリッド車の海外生産を始めているものの、電池やモーターなどの基幹部品はすべて日本から持ち出している。
しかし、こうした生産棲み分けは限界に近づいている。メーカー各社は、日本での生産には「円高、税金、自由貿易協定(FTA)、労働規制、温暖化対策、電力問題の“6重苦”がある」として、悲鳴を上げているのが実情だ。
じつはホンダでは、主力の鈴鹿製作所で、これまで海外に移転することが難しいとされた、ハイブリッド車の基幹部分の生産ノウハウを海外移転するための検証作業を、この2年間にわたって進めてきた。
「いかに過剰投資せず海外でもハイブリッド車が生産できるか。ようやくその構想が出来上がった」(ホンダ幹部)
モーターとIPUといわれる内製チップの海外生産はほぼ可能になり、「あとは現地での材料の調達をどうするかという段階」という。
さらには、基幹技術の開示を求められ、メーカー各社が本腰を入れていない中国でのハイブリッド車生産についても、「それでも検討しなければならない時期にきた」(ホンダ幹部)と明かす。
トヨタ関係者はハイブリッド車の基幹部品を日本から輸出するという従来の棲み分けが「今すぐ変わる可能性はない」というが、豊田章男社長などトヨタ幹部がこれまでの方針を改め、生産の海外移転をにおわす発言を相次いでしているのも事実だ。
このまま為替や通商政策への無策が続けば、日系メーカーのハイブリッド車の世界での攻勢は、海外への生産本格移転の号砲となるかもしれない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)