自動車の製造ライン写真はイメージです Photo:PIXTA

世界の主要自動車メーカーの4~6月期決算が出そろいつつある。決算内容からはトランプ関税が各社の業績に与える影響が鮮明に表れた。自動車業界は現在、“100年に1度”の大変革期を迎えている。こうした中、トランプ関税は、世界の自動車業界再編を加速させる“起爆剤”となる可能性がある。もし日本メーカーが有効な生き残り戦略を打ち出せなければ、海外企業による買収の標的となる恐れもある。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

トランプ関税によるコストアップで
主要自動車メーカーの優劣が鮮明に

 ここへ来て、世界の主要自動車メーカーの4~6月期の決算が出そろいつつある。日米欧の主要自動車メーカーの決算を見ると、トランプ関税によるコストアップで、各社の優劣が鮮明になっている。日欧などで相互関税、自動車と関連部品の関税率は15%になったが、関税率の上昇でコスト上昇のインパクトは甚大だ。

 元々、世界の自動車業界は“100年に1度”の変革期にある。電気自動車(EV)などの電動化に加えて、ソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)開発競争は急速に激化している。その中で、存在感を増しているのはBYDなどの中国企業だ。今後、日欧米の主要メーカーは、中国企業とのし烈な競争に巻き込まれることは避けられないだろう。生き残りを懸けて、有力メーカー同士の合従連衡、あるいはIT企業との協業が必要になるとみている。

 そうした状況下、わが国の企業動向も一つの焦点になるはずだ。日産がどのような生き残り策を取るのか、マツダがトヨタとの協業体制を一段と強化するのか、など注目点は多い。特に日産はかなり厳しい状況に追いこまれており、有効な生き残り戦略を示せないと、台湾の鴻海精密工業など海外企業の買収ターゲットになる恐れが高まる。

 トランプ関税は、世界の自動車業界再編に向けた起爆剤になる可能性もある。それは、わが国経済にとって重大なインパクトになるかもしれない。