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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

数次ビザの発給は沖縄にとってビッグチャンス
期待感の低さはそのチャンスを殺す

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第60回】 2011年7月7日
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 東日本大震災以降、原発事故の影響で、日本に来る外国人観光客数が場所によっては一時的にゼロとなった。被災地の人々が福島原発事故の被害を受けているだけでなく、日本全土の観光業界が大きな被害を被っている。5月に入ってからようやくすこしずつ動きだし、6月には急速な回復傾向を見せた。

 6月下旬、上海で開かれた「日本観光・食品展」に出た際、日本在上海総領事館の泉裕泰総領事が会見で、同館で発給した中国人の訪日団体観光ビザ件数が4月はゼロだったのに対し、5月は151件、6月は27日までで5259件に上った、と述べた。「その勢いは『飛び立つ』という言葉で表現するのでは足りず、ヘリコプターのように直線で上昇している」と総領事は喜びを隠さない。

 実際に人気が急上昇しているところもある。中国人個人観光客に対して数次ビザの発給に踏み切った沖縄だ。この数次ビザは7月から発給手続きを開始するが、有効期間は3年である。しかも1回の滞在期間は従来の15日間から90日間に延長された。ただし発給には条件がついている。1度目は必ず沖縄を訪問しなければならない、というものだ。2度目以降の訪問は、日本国内のどこを訪れてもいい。

 中国人観光客に数次ビザを発給するのははじめてのことなので、私のところにも上海の親戚から問い合わせの電話が来たほどだ。しばらくすると、7月の申請枠がもういっぱいになってしまったので申請は8月にずれこんだとの泣きの連絡も入った。上海で中学校時代のクラスメイトたちとの懇親会に出たときも沖縄の数次ビザのことが酒の肴になっていた。関心はやはり有効期間内に何度でも日本に入国できるその便利さにある。

 早くから旅行をスケジュールに入れる日本人観光客の行動パターンとは違って、中国人観光客の多くは、かなり直近になってから観光に行こうと決め、急いで訪問先を選び、旅行社に依頼する。ある程度の地位のある人や責任あるポストにいる人はなおさら早い時点で自分のスケジュールを決められない。上海のある大手会社の社長をしているクラスメイトも、「私も直近になってようやく休暇をとっていいか判断できる。3年間有効の数次ビザがあると日本に行きやすい」と手放しで喜んでいた。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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