少しずつ、認識が広まりつつある大人のADHD──注意欠陥・多動性障害。
調査によってばらつきがあるが、日本の成人ADHDの有病率はおおむね成人総人口の2.5~4%とされる。少なくとも250万人以上は潜在している可能性があり、決して稀な障害ではない。
ADHDは、脳内の神経伝達物質のうち、実行機能回路と報酬系回路に関係するノルアドレナリンとドーパミンの機能障害が原因。
「よけいな一言が多い」「気が散りやすく、忘れっぽい」「面倒なことを先延ばしにする」などの行動パターンの背景には、抑制的な行動の欠如や、後々の大きな報酬を得るまで待てず目先の報酬に飛びつくなど、報酬系回路の不全があると考えられている。
学生のうちは社会に適応していた場合でも、就職や結婚生活で生きづらさを感じ、初めて「自分はADHDではないか」と疑う人は少なくない。
米国精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き(DSM)-5」の診断基準に沿った成人ADHDスクリーニングテストでは、
(1)直接話しかけられているにもかかわらず、会話への集中が困難。
(2)会議など着席すべき場面で離席してしまうことがある。
(3)時間があるときにくつろいだり、リラックスして過ごすのが難しい。
(4)会話しているとき、相手の話に割り込み、相手の話を終わらせてしまうことがある。
(5)ぎりぎりまで物事を先延ばしにすることがある。
(6)日常生活の細々した秩序を守るため誰かに依存している。
の6項目で「全くない(0点)」から「頻繁にある(5~2点)」まで5段階で評価。
大人のADHDでつらい点は、生きづらさを一人で抱えているうちに適応障害やうつ病、薬物依存やアルコール依存など二次障害を引き起こすことだ。
質問によって配点が違うので詳細は省くが、(1)(2)(6)が「頻繁にある」ようなら、専門医に相談してもいいかもしれない。不安を打ち明け、対処法を一緒に探るだけでも気持ちが変わってくる。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)