男の健康
「引きこもり」するオトナたち
【第11回】 2010年3月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
池上正樹 [ジャーナリスト]

成績優秀なのに仕事ができない
“大人の発達障害”急増の真実

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 自らの「発達障害」に気づかない40~50代の大人が増加している。

 厚労省が2010年に公表する新しい「ひきこもり支援ガイドライン」の中でも、引きこもる要因の第1位(27%)に挙げているのが、前々回で指摘した、この「発達障害」だ。

 大手銀行員のコバヤシさん(仮称)もその1人。コバヤシさんは、朝起きるのが苦手で、定刻に出勤できずに遅刻してしまうことがたびたびあった。一旦、寝ると、14~5時間も寝てしまうことがあり、目覚まし時計をかけても起きられない。高校生のときまでは親に起こしてもらっていたので問題にはならなかったが、1人立ちしてから、頻繁に寝坊するようになってしまった。

 取引先などと待ち合わせしても、つい遅刻を繰り返してしまう。出かける前になると、別の仕事のことが気になって、あちこち資料を探し回っているうちに、出るのが遅れてしまうからだ。先方を待たせないように待ち合わせの約束を優先しなければいけないはずなのに、気になりだすと、どうしてもやめられないのだという。

 仕事の手順がわからないときも、上司や同僚などに聞けばいいのに、自分の判断で勝手に進めてしまうところがあった。その結果、ミスや失敗をして、周囲に迷惑をかけることになる。次第に「信頼できないヤツ」と評価されるようになった。

 また、コバヤシさんは整理整頓が苦手で、机の周りは書類などが散らかり放題。必要な資料がどこにあるのか、自分でもすぐに見つけることができない。片付けようにも、どこから手を付けていいのかわからず、仕事の効率は悪くなるばかり。さすがに、自己評価も低くなって、気分が落ち込むことが多くなった。職場では孤立し、軽いうつ状態に陥ったという。

「落ち着きがない」「ミスが多い」
子供特有じゃない“大人の発達障害”

 やるべきことを先延ばしにする。仕事のミスが多い。時間に遅れる。人の話を聞かない。人付き合いがうまくできない。場の空気が読めない。キレやすい。落ち着きがない。片づけられない――そんな“大人の発達障害”が問題になっている。

 発達障害といえば、衝動的な行動をとることがある「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」や、対人スキルや社会性に難のある「自閉症」と「アスペルガー症候群(AS)」、特定能力の習得に難のある「学習障害(LD)」などの総称。これまでは、生まれつきや何らかの理由で脳の発達が損なわれ、子供特有の障害だと思われていた。しかし、「大人の発達障害」の場合、うつ病や依存症を併発するなど、より大きな問題を引き起こしかねないことが明らかになってきたのだ。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。月刊誌や週刊誌、夕刊紙で、ひきこもり現象や健康医療、マンションなど、医・食・住のテーマを主に手がける。著書は、『ハッピー リタイア マニュアル』(ゴマブックス)、『痴漢「冤罪裁判」』(小学館文庫)、『「引きこもり」生還記』(小学館文庫)など。2010年7月に『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)を上梓。
 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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