中国の経済は“一見”好調そうに見える。しかし、それは5年に一度、この9月に開催される共産党大会のために、いわば人為的に安定させているのだ。
共産党大会前に経済(金融)の乱調は許されない。中国の政治制度上の重要イベントとしては、毎年3月に開催される全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)もあるが、共産党大会は共産党の人事を決めるだけに重要度が違う。組織では人事が重要で、人事さえ決まれば政策は自ずと見えてくるものだ。
さらに今回の共産党大会は、中国共産党にとって重要な意味がある。旧ソ連は中国にとって共産主義の「先輩」国家だが、69年で崩壊した。共産党大会では、通例“5ヵ年”経済計画を作成するが、その期間中に旧ソ連の69年を超える。つまり、共産主義国家として最長の歴史を持つことになるわけで、共産主義の歴史においての意義も深い。
まもなく64歳になる習近平に対しても、昨秋から中国の国家主席の中でも最高位とされる「核心」という呼称を使い始めた。核心と呼ばれた指導者は、歴代のうちでも毛沢東、鄧小平、江沢民の3人だけだ。2013年から国家主席を務め、憲法の規定では任期は2期だが、早くも3期とのうわさも出ている(奇しくも、日本の安倍首相も例外的な3期目が約束されている)。
共産党大会まで経済はひたすら「安定」
共産党大会を念頭に置いた経済政策の基本方針は、とにかく「安定」である。様々な経済的問題で不満を持った人々が天安門広場に結集するなど、“革命的”な動きは困るのだ。中国は欧米の先進国などと違って一党独裁なので、複数政党で政権交替することで国民のガス抜きをするような発想はできない。革命になってしまうのである。
経済政策としては、胡錦濤前国家主席が決めた「GDP2倍計画」の達成を経済成長のベースとしており、そこから逆算して今年の経済成長率を6.5%としている。この経済目標自体も現在の中国にはきつい目標だ。ちなみに昨年の経済成長率の目標は6.7%で、通常、GDPは4半期ごとに発表するが、4回とも6.7%にピタリとそろった。中国の経済統計にはこうした“特徴”があるのだ(日本は2020年のGDP600兆円にせよプライマリーバランスの黒字化にせよ、政策目標は達成しないのが常だ)。