日銀が出口戦略で抱える「3つの不都合な真実」

 米国が利上げサイクルに入り、欧州中央銀行(ECB)の利上げ観測も生まれている中、日本銀行が量的緩和策を店じまいし、利上げに向かう出口戦略への関心も高まっている。ただし、日銀には出口を出るのを難しくする「3つの不都合な真実」があり、金利ゼロの低金利がずっと続く「永遠のゼロ」を余儀なくされるリスクを内包する。そのリスクを回避するため、みずほ総合研究所は「3つの提言」をまとめた。2%の物価上昇目標を弾力化して長期的な目標に変更し、「日本版アコード」で、政府と日銀が一体的に対応しながら、これからは成長戦略や財政政策にバトンタッチしていく戦略だ。

日銀が抱える
「3つの不都合な真実」

 日銀は2016年9月の総括的検証で、短期から中長期の金利までの金利形成を低めに抑えるイールドカーブコントロールに転じることで、長期にわたる緩和を可能とする枠組みへの転換に成功した。しかし、依然、出口にまで至る閾値に達するには極めて高いハードルがあり、このままではマイナス金利も含め出口に向かう糸口をつかめずに「永遠のゼロ」が続く不安も大きい。

 以下の図表1は、「3つの不都合な真実」での状況を示す。

「3つの不都合な真実」とは、(1)日銀の出口は米国が利下げになるまでの限られた猶予期間であること、(2)日銀は量から金利ターゲットに転換することで長期緩和維持を可能としたがその反面、追加緩和を放棄した状況にあり、「デフレ脱却」は米国の景気回復に依存する風任せ状況にあること、(3)銀行の日銀当座預金へげのマイナス金利適用と、イールドカーブコントロールで金利を抑え込み市場機能に麻酔をかけた状況にあることで、市場との対話は難しくなっていること。さらにマイナス金利は劇薬だけに金融システムに副作用が大きいことにある。