最近、生産性について考えをめぐらせていて気づくことが多くある。
生産性とは、企業が投入(インプット)したものに対して、どのくらい多くの産出(アウトプット)を生み出せるか問う尺度である。インプット/アウトプットの比率が生産性である。また、インプットはフローではなくストックである。ところが、このストック評価がうまくいかない。その企業の従業員が有している能力、企業の組織文化が発揮する成果への貢献。こうした存在は定量化できない。このために、銀行から十分な融資を受けらず、成長のチャンスを逸している企業も多いはずだ。
バランスシートから
「無形資産」が抜け落ちている
企業が保有している労働・設備をフル稼働させてどのくらいのパフォーマンスが得られるかが生産性の評価である。企業の資産の中には、設備のような有形資産のほかに、付加価値を生み出す資産があるのだが、それが見落とされ気味だ。つまり、有形資産ではなく無形資産を包括的に定量評価するツールの不十分さである。
設備ストックなど伝統的な資産は貸借対照表に載ってくる。だが、従業員のスキル、つまり経済学でいう人的資本は、貸借対照表には載ってこない。収益を資産で割ったROA(総資産利益率)は、企業の保有する設備や土地、お金などのストックだけを分母にしているから、人的資本はそこから抜け落ちる。収益の方には、人的資本は貢献していいはずである。すると、人的資本を厚く有する企業ほど、本来ならROAは高くなる。貸借対照表に載ってこない人的資本などのリソースを使って収益を大きく稼いでいる企業ほど、ROAは見かけ上高くなってもおかしくはないはずだ。