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アナリストが教えるリサーチの教科書 自分でできる情報収集・分析の基本
【第2回】 2017年6月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
高辻成彦

成功するリサーチは
4Sを意識することから始まる!
『アナリストが教えるリサーチの教科書』から情報収集・分析の基本を学ぶ

『アナリストが教えるリサーチの教科書 自分でできる情報収集・分析の基本』を上梓した、アナリストの高辻成彦さんに聞く、ビジネスリサーチの基本とは? 連載2回目の今日は、ビジネスリサーチの切り口となる「4S」と、分析のコツを紹介します。

ビジネスリサーチの
とっかかりになる「4S」とは?

 みなさんは、「4S」をご存知でしょうか。
 ビジネスリサーチでは、4つの切り口から、情報をおさえるのが効率的です。
 この4つの切り口を4Sと呼びます。

 具体的には、「Structure(構造)」、「Statistics(統計)」、「Share(シェア)」、「Strategy(戦略)」の4つです。

 リサーチをするときは、やみくもに調査を開始するのではなく、4Sを満たすことを意識すると、バランスのよいリサーチになります。

Structure(構造)

 第1は、Structure(構造)です。構造とは、業界構造のことです。
 ある事業を調べるには、その業界の構造を把握する必要があります。

 たとえば、「製品やサービスの分類」、「用途別・地域別の分類」、「製品やサービスの製造・販売の流れ」、「規制動向」、「季節性」などです。

 業界によって、切り口は異なりますが、上に挙げた項目は調べておきたい基本項目です。

Statistics(統計)

 第2に、Statistics(統計)です。
 業界の市場規模を知るために、使える統計があるかどうかを調べます。

 たとえば、政府統計、業界団体統計、市場調査会社の統計、市場調査報告書、新聞情報などをあたります。

Share(シェア)

 第3に、Share(シェア)です。
 市場シェアを得られるかどうかを調べます。

 具体的には、市場調査会社、業界団体、事業会社のIR情報、新聞情報などをあたります。

Strategy(戦略)

 第4に、Strategy(戦略)です。
 これは、競合と比較するにあたって、競合それぞれに、どのような戦略的な特徴があるかを調べます。

 主な調査項目は、「製品やサービスの特徴」「用途別・地域別展開の特徴」「事業構造の特徴」「収益性の特徴」などです。

3つの視点から業界の切り口を考える

 それでは、集めた情報をもとに、業界の全体像を分類する手順を追ってみましょう。
 考えられる分け方としては、主に、次の3つがあります。

 1)用途別
 2)地域別
 3)製品・サービス別 
 

 製品やサービスの買い手である用途先の割合がわかれば、どの業界が最も影響を与えているのかを特定できます。

 たとえば、工作機械業界の場合、自動車業界が買い手(用途先)としては、最も大きなウェイトを占めています。

 特に、2008年のリーマンショック前までは、大きな割合を占めていましたが、リーマンショック直後の2009年は一時、急減し、その後は、徐々に拡大することで、再び、工作機械業界全体の中で、自動車業界が買い手(用途先)として大きな割合を占めています。

 このことから、工作機械業界は、自動車業界の設備投資動向次第で、業績が左右されやすいということがいえます。

 また、地域別での割合がわかれば、その業界が、どの地域の需要動向の影響を受けるかがわかります。

 たとえば、フォークリフト業界の場合、リーマンショック以降、アジア向けの変動が非常に大きくなっています。
 したがって、アジアの需要動向に、業界の業績が左右されることがわかります。

最も多い分類先が収益源とは限らない

 どの製品・サービスが、最も高い収益源になるかを特定することも重要です。

「最も大きい分類先=最も高い収益源」であることが多いのですが、必ずしもすべてがそうとは限りません。

 建設機械業界で考えてみましょう。
 建設機械業界は、16年度上期まで、前年割れの需要動向が続いていました。
 これは、中国の建設機械市場と、鉱山機械市場の需要減が影響してのことです。

 鉱山機械とは、鉱山で使われる大型の工作機械です。
 鉱山機械市場は、建設機械業界での売上高比率としては、2割程度しかないと言われています。
 それでも、建設機械業界の業績が落ち込んだ、ということは、鉱山機械の利益率は、建設機械業界の主要製品の中では、比較的高い、ということがいえます。

 このように、用途先、地域別、製品・サービス別での業界分類を試みることで、業績を左右するものを特定することが、業界構造を把握する上で重要なポイントになります。

 ビジネスリサーチでは、どれだけ定量的なデータが得られるが重要です。
 そのためには、今回、紹介した4Sをおさえることが近道ですが、効率よく分析するには、経済統計や経営戦略論、財務分析の基礎知識が、どうしても必要になります。

 『アナリストが教えるリサーチの教科書 自分でできる情報収集・分析の基本』では、初歩的な部分ではありますが、それらの基礎知識についても解説しています。
 ご興味のある方は、参考にしていただければと思います。

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高辻成彦 (たかつじ なるひこ)

立命館大学政策科学部卒、早稲田大学ファイナンスMBA。いちよし経済研究所(東証1部・いちよし証券の調査部門)のアナリスト。主な職歴は経済産業省、ナブテスコ(東証1部)の広報・IR担当、ユーザベース(東証マザーズ)のシニアアナリスト。経済産業省在籍時は経済波及効果測定のための経済統計である産業連関表の時系列表作成に参画。ナブテスコの広報・IR担当時は日本IR協議会によるIR優良企業特別賞の所属会社初受賞に貢献。ユーザベース在籍時は業界・企業情報サービス・SPEEDAの業界レポート作成や、経済ニュースアプリ・NewsPicksの経済コメント活動に勤め、最古参ユーザーとして8万人以上のフォロワーを得る。現職では企業取材活動をもとに年間約200本のアナリストレポートを発行。日経ヴェリタスのアナリストランキングにランクイン。


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