米国のマネーストック(マネーサプライ)M2が6月下旬から7月初めにかけて驚くほど急増した。6月22日から7月4日までの2週間で1646億ドルの増加(季節調整後)であり、リーマン・ブラザーズ破綻以降最大である。四半期末という季節要因も影響しているが、原因はそれだけではない。
「FRBのQE2(量的緩和策第2弾)の効果が表れたか」と思った人もいるかもしれないが、そうではない。じつは、ギリシャの財政危機が、米国のマネーストック統計に影響を与えたのである。
米国のMMFは、運用利回りを向上させるために、欧州系銀行にドル資金を大規模に預けていた。しかし、ギリシャ財政危機が混迷を深める過程で、彼らはリスク回避のためにそれを減らし、代わりに米国の短期国債を購入した。
彼らの需要増も加わって、短期国債の利回りはゼロ%に近い水準に低下し、それに引きずられてMMFの利回りも低下した。それを嫌った機関投資家はMMFを解約、その資金が米国の銀行預金に流れた。統計上、それはマネーストックの増加として計上される。