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日本人のための平和論
【第1回】 2017年7月11日
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ヨハン・ガルトゥング

米国に追従する日本が直面する危機とは?
キーワードで読み解くガルトゥング平和論<1> 対米関係・集団的自衛権・テロ編

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平和学の父と呼ばれるヨハン・ガルトゥングは、ノルウェーの社会学者であり紛争調停人である。その平和への貢献と影響力は、アカデミズムの世界でも、現実の国際外交でも広く知られている。過去50年、毎年日本を訪れ、政治家、官僚、研究者、NGO関係者、メディア、学生、一般市民と情報と意見を交換してきた日本通でもある。

「私の心は日本とともにある」と言うガルトゥングの目には、いまの日本が危機的状況にあると映る。そのような危機感に突き動かされて書いたのが『日本人のための平和論』だ。

この国が今ほどさまざまな難問に直面し、苦しんでいるところを見たことがない。米軍基地をめぐる日本政府と沖縄の対立は激しさを増す一方だ。中国とのあいだでは尖閣諸島をはさんでにらみ合いが続き、韓国とは竹島、ロシアとは北方四島をめぐる対立がある。北朝鮮からはミサイルの脅威。「慰安婦」や「南京事件」など、歴史認識をめぐる対立には解決の糸口すら見あたらない。(『日本人のための平和論』p.1)

ガルトゥングが同書で論じた提案のエッセンスを、いくつかのキー・ワードによってコンパクトに紹介したい。連載1回目の今回は、対米関係、集団的自衛権、テロなど、国際政治と外交の面を取り上げる。(構成・御立英史)

「積極的平和」とは何か?

ガルトゥング平和論の最重要キーワードは、なんと言っても「積極的平和」である。戦争がないだけでは平和とは言えない、というのは今では常識のような考えだが、その考えを世界で初めて提示したのがガルトゥングだ。彼は戦争がないだけでなく、飢えや貧困、差別や抑圧のない状態を「積極的平和」と名づけた。

「積極的平和」というのは、私が1958年から使い始めた用語である。平和には「消極的平和」(negative peace)と「積極的平和」(positive peace)がある。国家や民族のあいだに、ただ暴力や戦争がないだけの状態を消極的平和、信頼と協調の関係がある状態を積極的平和という。消極的平和を積極的平和と言い換えるだけならたんなる無知だが、こうまであからさまな対米追従の姿勢を積極的平和というのは悪意ある言い換え、許しがたい印象操作である。(p.19。以下ページ数はすべて『日本人のための平和論』

引用の後段にある印象操作云々は、言うまでもなく、米国追従の攻撃的政策を「積極的平和主義」というネーミングで推進しようとした安倍首相への抗議が込められている。

「構造的暴力」とは何か?

 「積極的平和」とともに、ガルトゥングが私たちに与えてくれた社会を見るレンズが「構造的暴力」である。物理的暴力がなくても、飢えや貧困、差別や抑圧は社会構造の中に存在する。ガルトゥングは1965年、調査のために赴いた南ローデシア(現在のジンバブエ)で、4%の白人が96%の黒人を支配している現実を見、「この国は平和だ」という白人たちの言葉を聞いた。

私はそのとき、これを平和と呼ぶのなら私は平和に反対しなくてはならない、と思った。たしかに言葉の通常の意味では暴力は存在していなかった。だとすれば、これを何と呼べばよいのか。96%の人々の苦境は社会構造に組み込まれていた。そこで私は、それを「構造的暴力」と呼ぶことにした。(p.133)

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ヨハン・ガルトゥング

1930 年、オスロ生まれ。社会学者。紛争調停人。多くの国際紛争の現場で問題解決のために働くとともに、諸学を総合した平和研究を推進した。長年にわたる貢献により「平和学の父」と呼ばれる。「積極的平和」「構造的暴力」の概念の提唱者としても知られる。自身が創設したトランセンドの代表として、平和の文化を築くために精力的に活動している。創立や創刊に関わった機関に、オスロ平和研究所(PRIO)(1959)、平和研究ジャーナル(Journal of Peace Research) (1964)、トランセンド(1993)、トランセンド平和大学(TPU)(2004)、トランセンド平和大学出版局(2008)がある。委員あるいはアドバイザーとして、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連児童基金(UNICEF)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国連食糧農業機関(FAO)などの国連機関で、また欧州連合(EU)、経済協力開発機(OECD)、欧州評議会、北欧理事会などでも重要な役割を果たした。教育面では多くの大学で学生を指導した。客員教授として訪れた大学は世界各国で 60近いが、そのなかには日本の国際基督教大学、中央大学、創価大学、立命館大学も含まれる。名誉博士、名誉教授の称号は 14 を数える。平和や人権の分野で、ライト・ライブリフッド賞(“ もうひとつのノーベル賞 "、ノルウェー・ヒューマニスト賞、ソクラテス賞(ストックホルム)、ノルウェー文学賞、DMZ( 非武装地帯 )平和賞(韓国)、ガンジー・キング・コミュニティ・ビルダー賞(米国)など 30 以上の賞を受賞している。


日本人のための平和論

北朝鮮問題、領土問題、拡張する中国、暴走するトランプ・アメリカ 
数々の国際紛争を調停してきた平和学の世界的権威が、いま日本のため、緊急提言する。

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