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『週刊ダイヤモンド』特別レポート

「平和学の父」に聞く、安保法制と北東アジアの未来

平和学者ヨハン・ガルトゥング博士インタビュー

週刊ダイヤモンド編集部
2015年9月30日
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安倍首相が積極的平和主義を唱えるよりもはるか以前に「積極的平和」を提唱したのが、ガルトゥング博士だ。氏は平和学の第一人者で、世界的に「平和学の父」として知られる。氏は安保法制が憲法違反であると厳しく批判する一方、アジアの平和構築に向けて、北東アジア共同体の設立を提案する。(聞き手/週刊ダイヤモンド論説委員 原 英次郎)

ヨハン・ガルトゥング博士(Johan Galtung)
1930年ノルウェー生まれ。平和学の第一人者で世界的に「平和学の父」として知られる。1959年に世界初の平和研究の専門機関、オスロ国際平和研究所(PRIO)を創設。1964年には影響力のある専門誌、『平和研究ジャーナル(Journal of Peace Research)』を創刊。その他多くの平和研究機関設立に貢献している。平和学の教授として米コロンビア大学、立命館大学など世界中で数千人の学生を指導。1957年からこれまでに200以上の国家間、宗教間紛争を調停した経験を持つ。1987年にもう一つのノーベル賞と言われる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞。2000年には世界初のオンラインで平和学が学べる大学、トランセンド平和大学を創設した。Photo by Toshiaki Usami

――最初に読者の理解を助けるために、先生の平和学のエッセンスを簡単にまとめてください。

 非常に簡単です。平和学は医学ではなくて健康学に似ていると思います。健康とはどういうものか、何が健康の害になるか、何が健康状態を良くするか。それと同じことが平和にも言えるのです。

 平和を二つに分けて考えます。「消極的平和」と「積極的平和」です。消極的というのはいかにして暴力状況あるいは暴力の発生を避けるかということ。積極的平和はいかにしてみんなが協力できるか、しかもそれが調和の取れた関係で、国の場合であれば、いろいろな国とどのように協力してやったらより効果が高いか、それをいかにして進めるかということです。

 一つだけ付け加えると、理論とともにプラクティス、実践が大事だということです。健康であるには理論だけでは意味がなく、実践がなければだめです。私は今までに160冊以上の専門書を出していますが、それとともに200以上の実践的なメディエーション(紛争解決)の仕事をしています。

世界で最も好戦的な国家と
共同歩調をとろうとしている

――今年は戦後70年に当たります。その節目の年に安倍晋三政権は憲法の解釈を変えて、新しい安全保障法制を成立させましたが、どう評価しておられますか。

 憲法解釈の問題ではないと思います。つまり彼は憲法の解釈を変えているのではなくてそれを侵害している。ことに憲法9条第1項は、国際間の紛争を解決するために武力を行使しないと謳っている。

 そうはっきりと憲法に謳われているにもかかわらず、いわゆる集団的自衛権という旗を掲げて、世界で最も好戦的な国・米国と共同行動を取ろうとしています。それはまさに戦争を国際間の紛争の解決策として使うということを、宣言していることになります。

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