photo:首相官邸HPより

 東京都議会選挙の結果は、「安倍一強政治」への不信任といえよう。

 最大の原因は、強引なその政治手法にあるのだが、経済政策の面でも、「一億総活躍社会」や「働き方改革」などにキャッチフレーズはめまぐるしく変わるものの、それを実現する根本の税の構造(例えば配偶者控除)や所得再分配政策に手を付けないという政権の本質も、次第に国民に見え始めてきたといえる。

「安倍一強」不信と民進党への絶望
所得再分配政策の欠如

 問題は、こうした国民の不満・不信の受け皿が、都議選では「小池・都民ファースト」だったが、国政では存在しないことだ。本来なら「受け皿」になるべき民進党には、国民(都民)が全く期待を寄せていないということも、今回、浮き彫りになったもう一つの真実だ。

 前回、6月21日の本コラム、『「安倍一強」経済のリスク、所得再分配の視点が決定的に欠落』で書いたように、アベノミクスが始まって4年以上経過し、景気拡大局面が長く続いているにもかかわらず、国民が豊かになったという実感を持てない理由は、税制や社会保障を通じた所得の再分配政策が不十分であること、それが中でも勤労世代の過剰な不安につながり、将来、賃金が上がったり経済が成長したりという期待が低下し、さらにそれが潜在成長力の低下に拍車をかけていることだ。

 所得再分配の最も効果的な方法は、累進税率となっている所得税で裕福な層により多くの負担を求め、それを財源にして必要な分野の社会保障歳出にあてることだ。これを大胆に進めるためには、そこそこの規模の安定した財源が必要で、どうしても所得税ではなく消費増税に頼らざるを得ない。

 だが、おそらくこのままでは2019年秋に予定される消費増税は、またまた遠のいた、と考えざるを得ない。それでは国民の不安はぬぐえない。