政府が推進する「働き方改革」が企業を悩ませている。「一億総活躍社会」を実現するためという掛け声の下、 次々と新しい施策が打ち出されたためだ。一体、「働き方改革」の本質とは何なのだろうか。 それが理解できれば、経営者や現場の担当者は何から着手すべきか見えてくるはずだ。

やるべきことが多すぎて
わかりにくい「働き方改革」

「木を見て森を見ず」というよりは「木が多くて森の形が見えない」状態ではないか。働き方改革をはじめ、長時間労働の是正、ワーススタイル変革、テレワーク、イクメン・イクボス、女性の活躍の推進……。働き方改革を「一億総活躍社会」を実現するための最大のチャレンジと位置付けている政府は次々と施策を打ち出し、企業に実行計画の策定を求めている。

 しかし、やるべきことが多過ぎて、働き方改革に詳しいコンサルタントの家田佳代子氏の元には「何から手を付ければいいのか?」という相談が企業規模を問わず持ち込まれている。

 そこでまず働き方改革とは何か? という話から始めよう。図1を見ていただきたい。全ての施策を包括する大きな枠組みとして「働き方改革」が位置付けられている。

 大きな枠組みの左側には男性の働き方に焦点を当てた「男性の意識・行動改革」があり、その中には長時間労働の是正、イクメン・イクボスという言葉に代表される出産直後からの男性の育児休暇取得の促進などがある。

 右側は女性に焦点を当てた施策で、「ワーク・ライフ・バランス」と「女性の活躍」の推進がある。ワーク・ライフ・バランスに向けた環境整備は、「働き方改革」の中の「ワークスタイル変革」という枠組みに含まれ、ワーク・ライフ・バランスの推進やICT(情報通信技術)を駆使したテレワークの推進などの施策が並ぶ。「女性の活躍の推進」には女性が働きやすい環境を整備する施策を盛り込んでいる。

 ばらばらの施策に見えるが、実は全てがある方向を向いていると家田氏は言う。「少子高齢化による労働力人口の減少に対処するための『女性の活用』(と付随する少子化対策)という意図が見えます。

 企業担当者が働き方改革を分かりにくいと感じるのは、ばらばらに打ち出した施策がなかなか実行されないために、カンフル剤として各施策を『働き方改革』という大枠でくくったからでしょう」。実は、順番が逆だから複雑に見えるのだ。