長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
2017年7月13日 樋口直哉 [小説家・料理人]

「行革の鬼」土光敏夫は食生活も徹底して合理的だった

イラスト/びごーじょうじ

 日本を代表する電機メーカーの一つ、東芝。2009年から6年間にわたって続けられたという粉飾決算が報じられ、買収した子会社が抱えた巨額の損失などもあって、ここ数年、経営危機がささやかれている。

 東芝は今から数十年前、1960年代にも一度、経営危機に陥っている。そのとき、改革を主導し、見事再建に導いた経営者が土光敏夫である。土光は日本経済団体連合会の会長なども歴任し、日本経済の自由化と国際化を推し進めた。カリスマ経営者として尊敬を集めた土光はその後、鈴木善幸、中曽根康弘から請われて、政治の世界でも力を発揮し、「行革の鬼」と呼ばれた。

 土光にはもう一つ異名がある。〈メザシの土光さん〉だ。82年6月、NHKの番組で質素な生活が放映されたことから、その名が付いた。この放送は行革を進めるための演出という説もあるが、メザシが好きで質素な生活を送っていたのは本当らしい。

「みんながメザシといってバカにしているが、おいしいし栄養もある」

 庶民の魚であるメザシを土光は愛した。見かけよりも実利を選ぶのが彼の流儀だ。年寄りは若い人のように食べなくてもいい、と食事は一汁一菜が基本。野菜は自給自足でナスやキュウリ、トマト、ダイコンなどなんでも作り、特製の野菜ジュースを朝食に加えたり、野菜の煮付けやみそ汁にしたりして食べていた。また「ダイコンは葉っぱに栄養分がある」など、素材を安易に捨てることを戒めている。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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