長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第35回】 2017年6月8日 樋口直哉 [小説家・料理人]

96歳まで生きたカゴメ創業者はトマトで日本人の健康に貢献した

イラスト/びごーじょうじ

 問題。昔、唐なすびや唐ガキ、赤ナスと呼ばれていた野菜は? 答え=トマト。

 トマトは江戸時代に観賞用として珍重され、明治時代以後、日本に広まった。そこに大きく貢献したのが蟹江一太郎、トマトケチャップなどで知られる企業、カゴメの創業者である。

 愛知県の農家の生まれだった蟹江は1899(明治32)年の春、自宅の脇で西洋野菜の種をまき、栽培を始める。やがて、収穫した野菜をホテルや西洋料理店などに卸すようになるが、トマトだけは匂いや味が敬遠され、売れずに残ってしまった。

 腐らせるわけにもいかない、と蟹江は残ったトマトの加工に乗り出す。試行錯誤を経て、1903年にトマトソース(現在のトマトピューレー)を完成させ、その5年後にはトマトケチャップ、ウスターソースの製造も開始する。

 国産トマトケチャップの起源は横浜で1903年に清水與助(よすけ)が製造した清水屋トマトケチャップとされる。しかし、この元祖ケチャップはすぐに姿を消してしまった。横浜は工業化が進み、野菜畑が減少。原料の確保が難しくなったためだ。

 一方の蟹江には先見性があった。原料のトマトを安定して入手するために、農家と今でいう契約栽培をはじめた。この“畑から考えていく”という考えは、現在でもカゴメの企業姿勢の一つになっており、同社は現在、日本におけるトマトケチャップ、トマトジュースなどのシェアナンバーワン。緑黄色野菜の国内消費量の約1割を供給し、トマトに至っては国内消費量の約3割を担っている、というから驚きだ。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

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