生活保護目当てで押し寄せる
貧困層が大阪市の負担に?
大阪市立大学・公共データ解析プロジェクトチーム(以下「大阪市大チーム」)は、2017年7月7日、大阪市の生活保護に関するデータの分析結果を公表した。この分析は、2016年に大阪市立大学と大阪市が締結した連携協定に基づくものであり、目的はデータ分析に基づく効果的な施策の実施であるとのことだ。
発表された7月7日、米国・ニューヨーク市で低所得層向け住宅政策の取材・調査を行っていた私は、スマートフォンでニュースの見出しをちらりと見て、卒倒しそうになった。どのメディアのどのニュースだったかははっきり記憶していないが、「大阪市大の分析によれば、大阪市では生活保護の受給期間が増加しており、生活保護を目的として大阪市に流入する人々の多さが裏付けられた」という内容だったからだ。
そもそも、生活保護の受給期間の増加は全国的な傾向であり、その背景のうち最大のものは高齢化だ。仕事を求める人々が流入する「寄せ場」の存在は、「山谷」を持つ東京都、「寿」を持つ横浜市、「釜ヶ崎」を持つ大阪市など、都市型貧困の特徴の1つでもある。寄せ場を必要とする理由と、生活保護を必要とする理由は、大きく重なっている。「生活保護が受けにくい」と広く知られている大阪市に、わざわざ生活保護そのものを求めて流入する人々が多数いるとは、あまり考えられない。
大阪市立大学は、日本の貧困研究の一大拠点の1つだ。今回の研究チームの教員たちも、貧困研究における定評ある実績で広く知られている。その大阪市立大学が、そんな研究成果を発表したとは、世も末だ。ネットスラングで言えば「gkbr(ガクガクブルブル)」――。しかし、なんとか気を取り直し、大阪市大チームの発表資料に目を通した私は、まっとうな研究がまっとうに行われていることに安心できた。
今回は、大阪市大チームが何をどう検討したのか、発表資料に何が書いてあるのかを中心に、生活保護の「いま」をデータから眺めてみたい。しかしその前に、地球のほぼ反対側にいた私を「ガクガクブルブル」とさせたメディア報道に、ツッコミをさせていただきたい。