「普通の大学生活」を望んだ罰?
喘ぐ生活保護世帯の大学生たち
2016年度、堺市の生活保護ケースワーカーたちは、大阪市立大学と合同で生活保護世帯の大学生(短大生・専門学校生を含む。以下「大学生等」)に関する調査を行った。調査対象となった大学生等は、生活保護で暮らす家族と同居しているが、生活保護の対象とはなっていない。生活保護制度が、高校卒業後の進学を前提にしていないからだ。本記事では便宜的に、「生活保護世帯の大学生等」と記述する。
数値の形で明らかになった結果の1つは、学生支援機構奨学金の借入額だ。生活保護世帯の大学生等は、86.6%が支援機構奨学金を利用していた。しかも借り入れ額も大きい。特に金額が大きくなるのは、4年制大学の場合だ。生活保護世帯の4年制大学学生に限ると、4年間で400万円以上を借り入れている(見込みを含む)比率は74.1%となる。
さらに、アルバイトの必要性も高い。生活保護世帯の大学生等の65.9%は、授業期間中に週3日以上のアルバイトに従事している。長期休暇中も、変わりなく週3日以上働いていることが多く、「夏休みにアルバイト日数が多い」というわけではない。同居している家族の生活保護費は、大学等に進学した本人の分だけ減額されている。だから、本人が働いて自らの生活を支え、さらに自らの学業を支えなくてはならなくなるのだ。
堺市・大阪市立大の調査結果からは、大学等の昼間部に進学した生活保護世帯の子どもたちが「普通の学生生活」のために支払わざるを得ない、重すぎる対価が浮かび上がってくる。
生活保護世帯の子どもたちは、高校進学にも高校生活にも、生活保護ゆえの制約がもたらす多様な困難を抱えがちだ。本連載でも、この問題を数度にわたって取り上げてきた。しかし、大学等へ進学した後については、漠然と「何とかなっているのだろう」と、希望的に観測していた。
この希望的観測は、堺市と大阪市立大の調査によって、粉々に打ち砕かれることになった。考えてみると、私は大学昼間部に通っている生活保護世帯の子どもに会ったことが一度もない。
そこで、調査を行った大阪市立大の研究者(現在は名古屋市立大)・堺市の生活保護担当係長に、調査について詳しく話を聞かせていただくことにした。
なぜ、この調査が発案されたのだろうか?