ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経済は地理から学べ!
【第15回】 2017年7月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
宮路秀作 [代々木ゼミナール・Y‐SAPIX東大館地理講師]

経済成長のカギは低賃金!?
ヨーロッパの自動車産業に注目!

1
nextpage

「経済×地理」で、ニュースの“本質”が見えてくる!

地理は、ただの暗記科目ではありません。農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問です。

地理なくして、経済を語ることはできません。

代々木ゼミナールで「東大地理」を教えている実力派講師であり、『経済は地理から学べ!』の著者でもある、宮路秀作氏に話を聞いてみました。

先進国って、どんな国?

 先進国という言葉があります。これは一般的には先進「工業」国を意味しますが、ここではあえて、先進工業国という言葉を使います。

 先進工業国では機械類(一般機械と電気機械の合計)や自動車の生産が盛んです。これらは国内市場だけでなく、世界市場へと積極的に輸出され、輸出品目の中心を占めています。

 先進工業国の多くは、最大輸出品目が「機械類」です。しかし、スペインの最大輸出品目は「自動車」なのです。スペインの輸出品目は「1位自動車、2位機械類」となっていて、これは先進工業国の中で、スペインだけなのです。スペインの経済発展の歴史を見ていきましょう。

 安い労働力を武器に発展!

 スペインは、第二次世界大戦後、「輸入代替型工業化政策」を採用していました。

 「輸入代替型工業化政策」とは、輸入している工業製品を国産化することで、自国の近代的工業化や経済発展を進めようという政策のことです。これは国内産業を育成することを目的としています。

 しかし、国民1人当たりの購買力が小さければ、市場規模には限りがあり、市場はすぐ飽和してしまいます。そのため、市場の拡大を目的に、輸出志向型工業化政策(自国に外資系企業の誘致を促し、生産および輸出を行う政策)に切り替えられます。

 スペインは1970年代半ばから輸出志向型工業化政策を採用します。さらに1986年には、ポルトガルとともにEC(ヨーロッパ共同体)に加盟することで、ヨーロッパ有数の自動車生産大国として発展しました。

 ガソリン自動車の祖といえば、ドイツベンツやダイムラーがあげられます。自動車産業は、ドイツやフランスといったヨーロッパの伝統産業なのです。

 そんなドイツやフランスに比べ、当時のスペインは、ヨーロッパにおいて比較的賃金水準が低い国でした。そのため、ドイツやフランスの自動車企業は、スペインの低賃金労働力を活用すべく、生産拠点として多くの工場を進出させます。

 結果、スペインでは部品製造業の集積も進みました。これにより外資部品メーカーによる技術供与が進み、国内製造部品の競争力が向上しました。こうした要因を背景に、スペインの自動車生産は飛躍的に発展したのです。

 しかし、思わぬライバルの出現に、スペインは方針転換を迫られます。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
  • ダイヤモンド・オンライン 関連記事
    借りたら返すな!

    借りたら返すな!

    大久保 圭太 著

    定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2017年7月

    <内容紹介>
    会社がつぶれないためには、会社に「お金」があればいい。つぶれない会社に変わるための「銀行からの調達力を上げる7つのステップ」や「儲ける会社がやっている6つのこと」、「つぶれそうな会社でも、なんとかる方法」などを紹介。晴れの日に傘を借りまくり、雨になったら返さなければいい、最強の財務戦略を指南する。

    本を購入する
    ダイヤモンド社の電子書籍

    (POSデータ調べ、8/13~8/19)



     宮路秀作(みやじ・しゅうさく) [代々木ゼミナール・Y‐SAPIX東大館地理講師]

     「東大地理、センター地理」などの講座を担当する実力派。
     一部の講師しか担当できないオリジナル講座を任され、 これらは全国の代々木ゼミナール各校舎・サテライン予備校にて サテライン放映(衛星通信を利用して配信)されている。「地理」を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった! 」と大好評。
     講義の指針は、「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。代ゼミ講師2年目から模試の作成にも携わり、2011年からは東大プレの担当も任されている。開設講座のほとんどがサテライン放映されており、また高校教員向け講座「教員研修セミナー」の講師を担当するなど、「代ゼミの地理の顔」となる。生徒アンケートは、代ゼミ講師1年目の2008年度から全国1位を獲得し続けている。 東京、名古屋、札幌、新潟と、全国の校舎で教壇に立つ。代ゼミ新潟校・名古屋校で開講された自身初のオリジナル講義は、100人教室が初年度から満席。翌年からサテライン放映講座となる。対面授業、サテライン授業あわせて、1週間で2000人以上の生徒を指導している。


    経済は地理から学べ!

    地理がわかれば、経済ニュースがもっとわかる! 仕事に効く「教養としての地理」。
    「東大地理」を担当する“現役"予備校講師が教えるから、面白くて、わかりやすい!
    地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。
    農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、
    現代世界で目にする「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
    地理という“レンズ"を通せば、人間の経済活動により深い解釈を加えることができます。

    「経済は地理から学べ!」

    ⇒バックナンバー一覧