日立の欧州鉄道事業が窮地、イタリア子会社株主との対立で日立製作所の鉄道事業の連結子会社、イタリアの鉄道信号大手アンサルドSTSでは、少数株主との対立が続いている Photo:Bloomberg/gettyimages

「アンサルドSTSの買収は失敗だった」。同社はイタリアの鉄道信号大手で、日立製作所の鉄道事業の拡大を支える連結子会社だ。国境を越えた標準信号システムを持つSTSは世界市場の拡大に欠かせない。

 冒頭の主張を強めているのが、STS株の31%を保有する投資ファンドのエリオット・マネジメントだ。少数株主の代表として、日立を揺さぶり続けている。

 日立は2015年11月、イタリアの防衛・航空大手フィンメカニカ(17年1月にレオナルドに社名変更)から、非上場の鉄道車両メーカー、アンサルドブレダの株式100%を取得すると同時に、上場企業であるSTS株の40%を1株9.5ユーロで取得した。

 しかし、当初計画していたSTSの完全子会社化は、TOB(株式公開買い付け)価格が、フィンメカニカと合意した9.5ユーロだったことにエリオットが反発。追加の株式取得で10.5ユーロに引き上げたが、取得比率は50.1%にとどまり、現在に至っている。

 問題は、不採算だったブレダと、高収益のSTSとの「抱き合わせ買収」によって、STSの取得価格が不当に引き下げられた疑いがあることだ。イタリアの証券取引委員会は16年2月、日立とフィンメカニカの「共謀行為」を認定し、TOB価格の引き上げを命じる行政処分を日立に下した。