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長内 厚のエレキの深層

EU離脱で価値がなくなった英国など、日本企業は見捨ててもよい

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第11回】 2016年6月27日
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英国のEU離脱は日本企業に
どれほどのインパクトを与えるか?

国民投票によってEUからの離脱を決めた英国は、世界経済に多大な迷惑をかけている。そもそもこれからの英国は、日本企業にとって必要な国と言えるのか Photo:AP/AFLO

 米国も英国も、感情が先に立った意思決定をしているとしか思えない。

 国民の感情を過度に刺激する大統領候補を擁立してまで次期政権を奪おうとしている共和党の姿は、まるで今の米国社会のひずみを象徴しているかのようだ。しかし、この度さらに憂慮すべき事態が起きた。英国が国民投票によって、EUからの離脱を決定したのである。これは彼ら自身にとっても、大英帝国としての自尊心をくすぐる以外にろくなメリットがない決定であり、それどころか、世界の金融、経済を大きく振り回すだけの迷惑この上ない事態を招いている。

 多くの報道で日本経済への影響が取り沙汰されているが、実際にそのインパクトはどれほどのものだろうか。筆者は、短期的に円高、株安傾向は続くとしても、実際に英国がEUから離脱するためには2年の時間を要することから、それまで足もとのような混乱が長期にわたって続くようなことは、恐らくないと考える。

 直近について言えば、輸出産業における一時的な為替差損による収益減少、訪日外国人観光客の減少などはあるかもしれないが、反対に日本人が海外旅行に行きやすくなり、バーバリーを買いやすくなるメリットもあるかもしれない。おそらくはその程度であろう。もしEU離脱が英国だけであれば、の話ではあるが。

 もう1つ、参院選を控えた日本への直近の影響として考えられるのは、予想外にドラスティックな為替と株の乱高下が、アベノミクスへの不安をクローズアップさせ、安倍自民党にとっていくらかの向かい風になることだが、これについても、日本国民は冷静に事態の推移を見極めるべきであろう。

 もちろん英国のEU離脱の影響は、EUが加盟国からの拠出金の10%強を失うという意味でも、英国という欧州の金融センターがEUの金融センターでなくなるという意味でも小さくない。報道されているように、日本の自動車メーカー各社や鉄道車両工場を展開する日立製作所など、EU市場向けに製品を輸出している日本企業の拠点が被る影響も大きいだろう。

 英国からEU諸国への輸出がどうなるかは、今後英国とEUとの間の関税協定がどのように締結されるかにかかっている。従来通り英国にある生産拠点を活かすという意味では、日本企業にとってできるだけ低率関税になってくれたほうがプラスになると思われる。しかし、長期的視点に立つと、筆者はむしろEUは英国に対して懲罰的に高い関税をかけても良いのではないかと思う。

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長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

「長内 厚のエレキの深層」

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