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スマートフォンの理想と現実

グーグルは知財バブルに翻弄されたのか?
Android陣営の弱体化とライバルの活性化を
招きかねないモトローラ買収の真意とは

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第5回】 2011年8月24日
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話題を独占した買収劇

 インターネット検索最大手の米Googleは、通信機器大手のMotorola Mobility Holdings(以下モトローラ)を約125億ドルで買収することを、8月15日(米国時間)に発表した。

 買収価格は1株あたり40ドルで、8月12日終値時点のモトローラの株価に約63%のプレミアムを乗せたことになる。また今回は、Googleが従来M&Aでよく使っていた株式交換ではなく、現金で支払われる。モトローラ側の現金を考慮しなければ、今回の買収によって、彼らは手元にある現金及び短期金融資産の1/3強(6月末時点)を使う計算となる。

 先週の通信セクターは世界的にほぼこの話題で一色だった。夏の終わりは、バカンスを楽しむ資本家たちに営業をかける時期だけに、景気のいい大型案件は、投資銀行家にとっても格好のセールストークとなったことだろう。

 しかしこの買収には、腑に落ちない点がいくつかある。もちろんモトローラの売却は以前から話題になっていたし、Googleがその相手となることも違和感はない。それでも、改めて買収の効果を考えてみると、多額の現金を吐き出し、また多くのプレミアムを乗せるだけの意味があるのか、正直分かりにくい。

Googleによる大盤振る舞いの舞台裏

 今回の買収の目的についてまず指摘されるのは、モトローラが保有する17,000件以上(これに加えて7,500件以上が申請中)の無線通信分野の特許である。無線通信分野を牽引する主要なプレイヤーであり、半導体レイヤーも含めて高度な技術を有するモトローラは、同分野で多様な特許を保有している。

 確かにこのところ、スマートフォンを巡る世界的な知財訴訟合戦は、活発さを増している。Androidの成長に伴い、Google本体のみならず同端末のベンダーは、アップルをはじめとした競合からの訴訟に直面している。特にSamsungやhtcといった主要ベンダーは、豪州や欧州での販売差し止め訴訟の結果、同端末を販売できない事態となっている。

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クロサカタツヤ[株式会社 企/株式会社TNC 代表]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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