7月末から8月にかけて、米国債はデフォルトの危機と騒がれ、格付会社が格下げを実施するなど、大きな動きがありました。しかし、実は、米国債は「減らしたくない、でも増やしたい」「外貨建て資産を持ちたい」という方にとって魅力ある商品です。そこで新刊『証券会社が売りたがらない米国債を買え!』の著者であり、債券のプロである林敬一さんに米国債について聞きました。連載1回目は、デフォルト&格下げ騒動の受け止め方です。
続けられたバーベキューパーティ
7月末から8月初旬まで、世界の株式市場は大荒れでした。
最大の原因は米国債のデフォルト騒ぎと、格下げです。私の本、『証券会社の売りたがらない米国債を買え!』は7月末に校了を迎え、8月の第1週は印刷を開始する時期で、出版社は肝を冷やしたようです。
内容に変更の必要はないのか?
印刷は止めなくて大丈夫か?
一方私はデフォルト騒ぎの継続する中、7月30日に日本を経ち、2週間の予定でNY郊外のコネチカット州スタンフォードのアメリカ人友人宅に滞在していました。彼はヘッジファンドの聖地スタンフォードで債券運用のファンドマネージャーをしています。社員100人を超える結構な規模のヘッジファンドです。
日本を経つ直前に編集者からの依頼で、万が一デフォルトした場合のことを加筆してほしいとのこと。大至急で書いた内容は、「デフォルトはしません。たとえしたとしてもそれはボクシングでいうスリップダウンで、判定には影響しません」という趣旨の文章でした。
その後、8月2日のデフォルト期限は無事通過したものの、8月5日のS&Pによる米国債の格下げがあり、株式相場は暴落し、リーマンショックの再来かというコメントや報道まで現われる始末。株式相場はまるでジェットコースターの様な一週間になりました。
債券(フィクストインカム)の専門家はその様子をどう見ていたのでしょうか。
格下げのニュースが入った金曜日の夕方、私は友人宅でバーベキューパーティの最中でした。彼と私の話し合いの結論は、
「こりゃー株はひと波乱だな。でも米国債はむしろフライト・トゥー・クオリティ(質への逃避)で買われるな」
というもので、家族と一緒にバーベキューを楽しみました。
果たして週明けの株式相場は634ドル安。しかし肝心の米国債は猛烈な勢いで買われ、格下げなどどこ吹く風です。