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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

「大連立」で駆け引きを――野田佳彦新首相の政権運営戦略を占う

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第17回】 2011年8月31日
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 菅直人首相が退陣を表明し、民主党代表選が行われた。1回目投票で、党内最大議員グループを率いる小沢一郎元代表や鳩山由紀夫前首相の全面支援を受けた海江田万里経産相がトップに立った。だが、有効投票の過半数に届かず、2位の野田佳彦財務相との決選投票となった。決選投票では、野田氏が前原誠司前外相など他の陣営の支持獲得に成功し、逆転勝利した。

 野田氏は代表選で増税による財政規律重視と大連立の必要性を訴えた。だが、党内で支持が広がらず、小沢・鳩山両グループの海江田氏支持表明によって、一時は泡沫候補扱いされた。しかし、微妙に表現を修正したものの、基本的には主張を変えずに地道に訴え続けて決選投票に持ち込んだ。そして決選投票では2位以下連合を創り上げた。粘り強さとしたたかさはなかなかだ。

決選投票で海江田氏支持が
広がらなかったわけ

 一方、海江田氏は決選投票で、小沢・鳩山両グループ以外からの支持を得られなかった。海江田氏の経験不足とリーダーとしての資質に疑問を持つ議員が多かったからだ。海江田氏は閣僚歴があるが、党代表や、党内のグループのリーダーの経験がない。また、05年総選挙で落選し4年間浪人していた。その間、小沢代表時代に、選挙区での活動が不十分だとして衆院選の第一次公認から漏れたこともあった。また、「かいらい万里」と呼ばれるように、小沢氏の完全支配下にいるイメージもマイナスだ。なにより、経産相として国会で野党議員に詰め寄られて号泣してしまった。

 更に、政権運営のビジョンに説得力がなかった。海江田氏はマニフェストの政策を堅持すると訴えた。だが「子ども手当」を撤回した「3党合意」を反故にして、「ねじれ国会」下でどう政権を運営していくのかの戦略は見えなかった。

小沢一郎氏の器の小ささ
なぜ海江田支持だったのか

 結局、要領のよさだけが目立った海江田氏を小沢氏が支持したのは、小沢氏が以前語ったとされる「神輿は軽くてパーがいい」という基準に合っていたからだ。逆に、小沢氏は「軽くない」候補をすべて拒絶した。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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