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野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

「環境基準」と「縮原発」を同時達成する
エネルギー政策は可能

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第29回】 2011年9月8日
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 震災後、再稼働できなくなった原発が増えたため、火力シフトが進んでいる。

 これによってLNG(液化天然ガス)などの発電用燃料の輸入が増えている。これは、発電コストを高め、いずれ経済活動に影響を与えるだろう。

 それだけでなく、CO2の排出量も増えているはずである。

 環境基準の達成は、現在のエネルギー基本計画が作られた2010年においては、重要な政策目標と考えられていた。しかし、震災後の電力不足の中で、この問題は忘れ去られてしまったようだ。脱原発を巡る議論においても、火力シフトによる環境問題は、重要な点としては論じられていない。

 単純に考えれば、今後原子力発電への依存度を引き下げてゆけば、火力発電量が増えて、CO2排出量は増えるはずだ。再生エネルギーに期待するといっても、原発に代替するほどの発電量を実現できるとは到底思えない。仮に今後の発電量を飛躍的に増やすことが可能になっても、発電コストは著しく高まるはずである。脱原発を主張する人たちがこの問題をどう考えているのかは、あまり明らかでない。

 震災後発生したさまざまの問題解決が優先するから、環境基準達成は忘れてもよいのだろうか? そうはいかない。これは、人類の未来に重要な影響を与える問題だからである。

日本の国際公約

 それに日本は、国際公約をしている。この点からも、環境問題が忘れられてよいわけはない。

 これまでの経緯がどうであったのかを、簡単におさらいしておこう。

 1997年12月の京都議定書において、温室効果ガスについて、先進国における削減率を1990年を基準として各国別に定め、共同で約束期間内に目標値を達成することが定められた。

 2008年の洞爺湖サミットで、世界全体の温室効果ガス排出量を2050年までに少なくとも50%削減するとの目標につき一致をみた。2009年7月のラクイラ・サミットでは、この目標を再確認し、先進国全体で2050年までに1990年比で80%以上を削減するとの目標が支持された。

 さらに、2009年9月の国連気候変動首脳会合において、日本は、2020年までに1990年比で温室効果ガスを25%削減することを表明した。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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