
人生100年時代、生涯現役で働き、心身ともに元気でいたいと思っている人は多い。しかし、高齢者になってから、どのように働き、どう生きるかは容易に答えがでない。経済学者・野口悠紀雄氏は、「自分を正しく位置づけよ」と語り、技術革新の中で高齢者が持つ強みや可能性、そして求められるリスキリングの在り方を提言する。※本稿は、野口悠紀雄『終末格差 健康寿命と資産運用の残酷な事実』(角川新書)を一部抜粋・編集したものです。
技術進歩がもたらす
代替効果と補完効果
一般に、技術進歩は代替効果と補完効果を持つ。
代替効果とは、それまで人間が行なっていた事を自動化し、そのために人間が行なう仕事が減ってしまう(あるいはなくなってしまう)ことだ。
それに対して補完的な効果とは、人間が新しい技術を使うことによって、より多くの生産物を作れるようになることだ。
新技術はこの両面を持っており、そのどちらが強く現れるかによって、社会に与える効果が異なる。代替的な効果が強く働けば、それまで人間が行なっていた仕事が自動的に行なわれるようになって、失業が増える。
それに対して、補完的な効果が強ければ、人間は仕事を続け、しかも、その生産性が高まる。このいずれが実現するかによって、技術のもたらす効果は大きく異なる。デジタル技術についても両方の効果があるのだが、補完的な効果が強く働くような社会的選択が行われていくことが望まれる。
こうした大きな変化の中に、自分を正しく位置づけることが必要だ。これは高齢者の就労に限ったことではないが、高齢者の場合にはとりわけ必要だ。