レヴィンにとって、「状況」は非常に広義の概念である。それは社会的状況やより広い環境、さらにはサブグループやグループ間のコミュニケーションの障壁にいたるまで、あらゆる要因をカバーしている。これら各要因の位置関係がグループの構造と「生態学的環境」を決定し、可能な変化の範囲を決める。なぜなら変化は、場全体における力の強さや相互関係に依存すると同時に、ある程度はそれによってコントロールされるからだ。

●変革モデル:解凍―変化―再凍結
 効果的に変革を達成するには、単に望ましい目標を特定し、そこにたどりつくためのいちばんまっすぐで簡単なルートを取るのではなく、選択可能なルートすべてを考慮に入れ、それらの可能性を検証した上で最適なルートを決定することが必要だとレヴィンは考えた。

 彼の変革マネジメントモデルは場の力の分析にリンクしており、マネジャーに2種類の抵抗力に用心するよう勧めている。1つは「社会的慣習」や「習慣」から来るるもので、もう1つは「内面的な抵抗」をつくり出すことから来るものである。これらの2つの異なる力は、グループ全体とそれに属する個人とのあいだの相互作用に根ざしており、これらの抵抗力を克服することができるのは、慣習を破ったり私利に挑んだりグループの習慣を「解凍」したりできるほど強力な推進力だけだ。ほとんどのメンバーはそのグループの行動基準の中にとどまっていたいため、人は現行のグループの価値観から遠く離れるほど変革に対する抵抗が大きくなる。

 レヴィンの考えでは、グループが何かに付与している価値の大きさを減じるか、価値を置いていることそのものを根本的に変えるかによって、このタイプの抵抗は緩和することができる。彼は、変革を達成するためには、信念や態度や価値観を解凍し、変化させ、再凍結する、という複雑で段階的なプロセスが必要だと考えた。最初の解凍の段階では通常グループディスカッションを行ない、そこで個人が他者の考え方に触れ自分の考えを適応させ始める。

 レヴィンの没後、「解凍―変化―再凍結」は、たとえば古い構造を放棄し、新しい構造を打ち立て、それを所定の位置に「固定する」といったように、ときに彼が意図したよりも厳格な意味で使われるようになった。このような硬直的な行動計画は、変化を連続的で流動的な発展ととらえる現代の姿勢にはそぐわない。特に最近の非直線的なカオスや複雑性の研究の観点からは、レヴィンの変革モデルの直線性は批判されることが多い。だが、レヴィンのモデルはもともとはプロセス志向だったのだ。レヴィン自身は変化を連続的プロセスと捉えており、グループや組織の力学には極めて複雑な力が作用していると認識していた。

●Tグループ
 現在Tグループ(トレーニンググループ)として知られているアプローチは、1946年にレヴィンがコネチカット州のユダヤ人コミュニティと黒人コミュニティの関係を改善する試みへの手助けを求められた時に開発したものだ。確立された行動パターンを解凍し、変化させ、再凍結させるために、まずこのようなグループの人々を一緒にすることが、摩擦領域を顕在化させる強力な手段だとレヴィンは気づいた。彼はこのような学習グループをTグループと呼んだ。この訓練手法は1970年代に特に人気を博した。しかし、レヴィンが意図したよりも、対立をあえて浮き彫りにする方法としてこの手法を解釈し用いている人もいる。