レガシーシステムがむしばむ企業の未来
「基幹業務システムは人間でいえば中枢神経のようなもので、普段は意識しませんが、その機能が損なわれると、全ての企業活動に支障を来します」
日本ビジネスシステムズ(JBS)執行役員兼SureBizCloud(シュアビズクラウド)代表取締役社長の櫻田浩氏は、基幹業務システムが抱える問題の根深さを、そう表現する。
日本の多くの中堅企業で今、「レガシーシステム」という名の時限爆弾の針が進んでいる。1990年代のベストセラーであった「AS/400」に代表されるオフィスコンピューター(オフコン)は、平成の時代を通じて中堅企業の屋台骨を支えてきた。専門的なIT部門を持たない企業でも比較的容易に導入・運用でき、事業の成長に合わせて業務アプリケーションを柔軟に追加開発できることから、広く普及した。経理、販売管理、生産管理など、企業の心臓部となる業務を、それぞれの企業独自の仕様で作り込み、長年にわたって使い続けてきたのである。
しかし、そのレガシーシステムが、今や企業の成長を阻害する大きな足かせとなり始めている。最大の課題は、システムの維持を担う技術者の枯渇だ。オフコン独自のプログラミング言語を扱える技術者の多くが高齢化し、次世代への技術継承は進んでいない。
櫻田氏は、顧客から寄せられる悲痛な声の一端を紹介する。「先日ご相談をくださったお客さまは、長年二人三脚でシステムを支えてくれたサポート会社から、担当者の引退を理由に『来年でサポートを打ち切らせてほしい』と突然通告されたそうです」。
この問題は、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で指摘された「2025年の崖」という言葉で、広く知られるようになった。同レポートでは、多くの企業がレガシーシステムを抱えたままDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できなければ、25年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らした。
深刻なのは、こうした技術的な問題が、経営そのものをむしばんでいく点だ。ブラックボックス化したシステムは、経営者がリアルタイムで経営状況を把握することを困難にする。正確な売り上げや利益の把握に時間を要し、経営判断のスピードが著しく鈍化する。市場の変化に対応して新たな事業を立ち上げようにも、基幹システムが足かせとなり、機会を逃してしまう。
人手不足、事業承継、グローバル化への対応、そして新たなビジネスモデルの創出——。中堅企業が直面するこれらの経営課題は、全てこのレガシーシステムという根深い問題とつながっている。もはや、基幹システムの刷新は、単なるコスト削減や業務効率化のための「守りのIT投資」ではない。企業の存続と未来の成長を懸けた、「攻めのDX」そのものなのである。
なぜクラウド型ERPが最適解なのか
この根深く、複合的な課題に対し、SureBizCloudは明確な処方箋を提示する。それは、世界標準のクラウド型ERP(統合基幹業務システム)ソリューションへの移行だ。中でも、SAPのクラウド型ERPが最適解となり得ると同社は考える。
その理由について、同社ビジネス企画推進本部経営企画部長の奥津宏之氏は、次のように説明する。
「クラウド型ERPの最大のメリットは、システムが陳腐化せず、自動的に進化し続けることです。従来のオンプレミス型は、導入した瞬間から古くなり始めますが、例えば『SAP S/4HANA Cloud Public Edition』は、四半期ごとの自動アップデートによって、常にシステムが最新の状態に保たれます。法改正への対応はもちろん、今話題のAIエージェント機能なども自動で追加されていきます。一度導入すれば、進化し続けるシステムを使い続けることができるのです」
さらに櫻田氏は、中堅企業がグローバルな競争を勝ち抜く上で不可欠な要素として、SAPシステムが持つ信頼性の高さを挙げる。
「上場企業やそのサプライチェーンに連なる企業にとって、SAPシステムが導入されているという事実は、大きな意味を持ちます。監査法人が財務諸表をチェックする際も、『SAPシステムの標準機能を使っているなら、内部統制はしっかりしているだろう』という暗黙の信頼があるのです。取引先にとっても、『この会社の財務データは信頼できる』という一種のお墨付きになります。今後は、海外企業との取引の増加や、多様な国籍の人材の雇用が進む中で、中堅企業にも上場企業に引けを取らない高いレベルのガバナンスが求められます。そのとき、世界標準であるSAPシステムは、強力な武器となるはずです」
日本ビジネスシステムズ(JBS)執行役員 兼 SureBizCloud代表取締役社長櫻田 浩 氏
SureBizCloudは、JBSから分社し、25年10月より事業を開始した。JBSは20年以上にわたり、ビジネスアプリケーション領域で専門性を培ってきたプロフェッショナル集団。その戦略子会社としてのスピンオフには、明確な狙いがあった。
「JBS本体の主要顧客は、日本を代表する各業界の超大手企業です。しかし、われわれがターゲットとするのは、その関連会社やサプライヤー、あるいは独自の技術で成長を目指す年商100億~500億円規模の中堅・準大手企業。顧客層も、求められるソリューションも異なります。より機動力を持ち、このマーケットに深く入り込んでいくために、独立した企業として動くことが不可欠だと判断しました」(櫻田氏)
同社のアイデンティティーは、「コンサルよりも親しみやすく、ITベンダーよりも柔軟に、顧客経営の確からしさを高めるパートナー」というタグラインに凝縮されている。
「上から目線で『あるべき論』を提示するのは、われわれの役目ではありません。お客さまの悩みや社内の力学といった、生々しい現実にとことん寄り添い、一緒に汗をかきながら、その企業にとっての最適解を見つけ出す。また、特定のITベンダーの製品を売ることが目的ではなく、あくまでお客さまの成長というゴールから逆算して、ベストなソリューションをフラットに提案する。その誠実さがわれわれの生命線です」と櫻田氏は語る。
この顧客本位の姿勢は、机上の空論ではない。JBS自身が01年から20年以上にわたりSAPシステムのユーザーとして、海外進出やM&A、株式公開といった数々の経営イベントを、SAPシステムを活用し乗り越えてきた「リアルショーケース」の経験に裏打ちされている。「この経験は、お客さまが基幹システムを利用する際の相談に対して、具体的な実証に基づいた支援を提供できるという点で、大きな強みとなっている」と奥津氏は述べる。
SureBizCloud ビジネス企画推進本部経営企画部長奥津宏之 氏
インフラ構築からアプリケーション開発、導入後の運用・保守、そしてセキュリティー対策まで、全てをワンストップで提供できるJBSグループの総合力も、顧客にとって大きな安心材料となる。
成功の鍵は「Fit to Standard」を実現する経営者の強い意志と覚悟
いかに優れたソリューションであっても、それを導入する「人」や「組織」が変わらなければ、宝の持ち腐れとなる。櫻田氏は、基幹システム刷新プロジェクトにおける最大の「落とし穴」は、「目標・目的の希薄化」だと指摘する。
「最も危険なのは、『システムが古くなったから新しくする』というだけの、目的が曖昧なプロジェクトです。システム刷新が、自社の10年後のビジョンや具体的な経営目標と固く結び付いていなければなりません。経営トップがその目的を自分の言葉で、情熱を持って語れないままプロジェクトを始めると、現場の抵抗に遭い、頓挫します」
実際にあった失敗事例として、櫻田氏は「経営陣の不協和音」を挙げる。
「社長のトップダウンでプロジェクトが始まったのですが、経営陣が一枚岩ではなかったのです。特に、現状のやり方に慣れている営業部門の役員から声が上がり、『システム刷新はするにしても業務のやり方は変えられない』という空気がまん延してしまったのです」
このような事態を回避し、プロジェクトを成功へと導くための鍵となるのが、「Fit to Standard」を実現するという経営者の強い意志と覚悟だ。この「Fit to Standard」というアプローチは、自社独自の業務プロセスを、SAPシステムが提供する世界標準・業界標準のベストプラクティスに合わせていく考え方である。
これまで、日本の多くのERP導入プロジェクトでは、まずシステムを導入し、自社の既存業務と合わない部分を洗い出し、システムとのギャップを埋めるために大規模なカスタマイズを行ってきた。一見、現場に優しいアプローチに思えるが、これがプロジェクトの長期化とコスト増大を招き、システムの複雑化・ブラックボックス化を生む元凶となってきた。
「Fit to Standard」は、この負のスパイラルを断ち切るための、いわば発想の転換だ。業務プロセスの在り方をゼロベースで問い直し、ベストプラクティスに合わせていく。そうすることで、導入期間とコストを抑えるとともに業務の効率化を実現する。
奥津氏は、このアプローチにおけるSAPシステムの優位性を次のように語る。
「世界中の優良企業の業務プロセスが、ベストプラクティスとしてSAPシステムの標準機能に組み込まれています。その機能数や業務カバー範囲は、他のERPとは一線を画しています。つまり、『Fit to Standard』を実践しようとしたときに、最も広範囲の業務をカバーでき、自社の業務を合わせる先として何より信頼できるのがSAPシステムなのです」
もちろん、この業務改革には痛みが伴う。長年慣れ親しんだやり方を変えることに対する、現場の心理的な抵抗は想像以上に大きい。
だからこそ、変革には経営者の強い意志と覚悟が不可欠となる。「われわれは何のためにこの痛みを乗り越えるのか」という大義を、トップ自らが飽くことなく全社に発信し続ける。そして、決してブレずにプロジェクトを推進するという強いリーダーシップが問われるのだ。
SureBizCloudの役割は、この困難なプロセスにおいて、顧客の伴走者となることだ。システムを導入して終わり、ではない。経営層との対話を重ねて変革の目的を明確にし、現場のキーパーソンを巻き込みながら、彼らが主体的に業務改革をリードできるよう支援していく。全ては、「Customer Growth First(顧客の成長を第一に)」という信念を実現するためだ。
「失われた30年」ともいわれる長い経済低迷から、日本が真に脱却するためには、その屋台骨を支える中堅企業の躍進が不可欠だ。レガシーシステムという過去の遺産にしがみつき、緩やかな衰退の道を歩むのか。それとも、痛みを伴う変革を受け入れ、未来への成長に向けた「攻めのDX」にかじを切るのか。その選択は、もはや先送りできない段階に来ている。SureBizCloudが示す道筋は、その険しい道のりを照らす、確かな灯火となるだろう。
脱レガシーの最適解が「SAP Cloud ERP」である理由とは!?ー 今、中堅企業こそが選べる選択肢 ー
AS/400やKシリーズなど、長年支えてきたシステムも、今や保守コスト増やサポート切れが課題に。
基幹システム移行時の不安や疑問を解消する、SAP S/4HANA Cloud Public Edition を活用した安全な移行方法と、業務改革・AI活用の具体事例を丁寧に解説します。
セミナーの詳細・お申込みはこちら
https://surebizcloud.oatnd.com/online-seminar
※オンラインセミナー申込フォームは、JBS子会社のSureBizCloudにてお受けしています。
日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS)
〒105-5520 東京都港区虎ノ門2-6-1 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー20F
https://www.jbs.co.jp/
記事中のERP関連サービスに関するお問い合わせは、SureBizCloudまで。
https://www.surebizcloud.co.jp/
