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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

「製造業の信仰」を捨てよ~雇用を増やす複眼思考
――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第38回】 2011年9月14日
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 景気分析には約束事がある。景気は「まず、鉱工業生産をみよ!」である。この常識は一面正しいが、あまりに教条的に信じると、雇用の実体を見過ごしてしまう。

 国民にとって豊かさを取り戻すためには、雇用拡大・賃金上昇が最重要の課題である。それなのに、エコノミストの景気分析が生産・輸出・収益のことばかりに関心を注ぎ、雇用の在り様に無頓着になると、有用な政策提言もできなくなる。一昔前の流行語を使うと、「バカの壁」がここにはある。

製造業の生産拡大と雇用拡大が
イコールではないという証拠

 そこで、製造業の生産拡大≠雇用拡大の証拠を挙げてみたい。グラフは、鉱工業生産指数と就業者数の対応関係を示している(図表1参照)。明らかなのは、両者はリンクしていないことだ。

 製造業の就業者数はトレンドとして右肩下がりであり、過去20年間にわたってトレンドに変わりがない。今になって「産業空洞化」が不安視されるが、もっと昔から生産水準の回復とは半ば独立に就業者数が減っているのである。

 おそらく製造業は、周期的に訪れる生産調整の度に、大規模なリストラを行なって、その後生産回復する局面であっても、雇用を増やしてこなかった。この状況は、「工場が海外移転するから製造業の雇用者が減る」というステレオタイプと事情が異なっている。

 なぜ、製造業が就業者を増やさないのかというと、資本投入を通じて生産性上昇を行なっている事情がある。特に輸出産業は、雇用を増やしながら労働生産性を上昇させるのではなく、設備投資を行なって資本の生産性を高めようとする。

 円高が進むと、競争力を維持しようとして、雇用を削減しながら設備投資を増やす対応を採ると説明すればわかりやすい。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト]

しまもと・こうじ/1990年、東京大学卒業、日本興業銀行入社。調査部門で金利分析や経済予測を担当。2000年からBNPパリバ証券で投資調査本部長兼チーフストラテジストとして金融市場予測を担う。日本経済新聞社の債券アナリスト・エコノミスト人気調査の債券部門では06、08年に1位。金融庁の金融市場戦略チームや金融税制研究会、行政刷新会議の事業仕分けなどに参加。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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