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吉田恒のデータが語る為替の法則

安全資産バブル破裂の前兆あり!悲観相場転換で10%以上のドル高・円安へ

吉田 恒
【第150回】 2011年9月20日
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 今週は「マルセイユのG7(先進7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)は中身なし」との厳しい評価で始まりましたが、ここに来て、世界経済に対する悲観論が少し一息ついた感じとなっています(「米国の軌道修正で悲観論後退でドル高に。悲観論継続でも『有事のドル高』で反発へ」を参照)。

 また、異例のスイスフラン高阻止策に対しては否定的な見方が少なくなかったものの、今のところ、スイスフラン高は止まっています。

 これらは、行き過ぎた悲観論が転換し、「安全資産バブル」破裂の前兆ではないかと私は考えています。

「クリスマス合意」と「リバーサル合意」は十分に機能した

 まずは、発表から少し時間が過ぎてしまいましたが、スイスフラン高阻止策の影響を考えてみたいと思います。

 一般的に、「通貨安阻止策」と「通貨高阻止策」では、「通貨安阻止策」は持続性という点で困難なところがあり、限界があると言えるでしょう。簡単なことで、「通貨安阻止策」は自国通貨を買い、外貨を売る介入を行うわけですが、売るための外貨の保有には自ずと限界があるからです。

 これに対して、基本的に「自国通貨売り介入」による「通貨高阻止策」は無限に近く可能でしょう。

 それでも、歴史的に見れば、基本的には難しいとされる「通貨安阻止策」でも、今回のスイスのように特定水準にコミットし、かつ成功した例はいくつかありました。

 1987年12月のG7における「クリスマス合意」、1995年4月のG7における「リバーサル合意」はその例でしょう。

 1987年12月の「クリスマス合意」は、「これ以上の米ドルの下落を望まない」として、120円を米ドルの下限とする米ドル安阻止の合意でした。結果的に、この120円はその後5年以上も米ドルの下限として機能したのです。

 また、1995年4月に行われたG7では、「為替相場を反転させる」といった「リバーサル合意」が決められました。これにより、米ドルは80円付近で底を打ち、この80円が最近まで15年以上も米ドルの底値となりました。

スイスフラン高阻止策が成功する条件とは?

 なぜこのように、基本的には困難で、政策の持続性に限界のある「通貨安阻止策」でも成功したのかと言えば、当該通貨、この場合は米ドルですが、それが「異常な割安」になっていたからということが1つの理由だったと思います。

資料1

 

 「資料1」は、米ドル/円の適正水準の目安である日米生産者物価で計算した購買力平価からのカイ離率です。

 これを見ると、購買力平価より3割前後割安になったところから、米ドルは下がり過ぎの警戒域の可能性があり、前述した1987年12月、1995年4月は、この「資料1」では1位、2位の「米ドル下がり過ぎ」となっていたことがわかります。

 特定水準にコミットした「通貨安阻止策」が一定の成功を収めたのは、このように、そもそもその通貨が下がり過ぎだったからということが一因だったと思います。

資料2

 

 続いての「資料2」は、スイスフランの対ユーロ相場での適正水準、購買力平価からのカイ離率を見たものです。これを見ると、最近のスイスフランは空前の割高になっていることがわかります。

 ちなみに、スイス当局は2010年前半にも対ユーロでの「通貨高阻止策」を行っており、こちらは失敗した形となりましたが、この「資料2」を見ると、当時はそれほど目立ったスイスフラン割高ではありませんでした。

 このように、通貨安でも、通貨高でも、それが成功するかどうかの1つのカギが、そもそも行き過ぎた相場になっているかどうかということならば、2010年前半に失敗したスイスフラン高阻止でも、今回は成功する可能性が十分にあると思います。

「最後の安全通貨」である円の下落は起こるか?

 もし、スイスフランの中期戦略が買いから売りへと転換が始まっているならば、「残された安全通貨」ということで、円買いがさらに強まることになるのでしょうか?

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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