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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

中秋の節句を前に起きた夜逃げ現象に
温州モデルの限界を見る

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第71回】 2011年9月22日
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 中国経済における民営経済の存在が1990年代に入ってから次第に注目されるようになり、その主たるモデルは3つあると言われる。

 一つは珠江デルタモデルで、合弁企業がその特色である。もう一つは浙江省の温州モデルで、個人経営企業(後に民営企業)がその主力を成す。三番目のモデルは「蘇南モデル」で、江蘇省南部に立脚する郷鎮企業(後に集団経営型の民営企業)が主役を演じる。

 その中でもっとも議論の対象になり、長く認められなかったモデルは温州モデルだった。

 「温州人」と言えば、中国では「独特の性格をもつ浙江省温州出身の人びと」と理解する。浙江省温州市は、面積の70%を山岳地帯が占め、1990年代前期、耕地面積は1人当たりにすると2.7アールしかなかった(全国平均面積は約9.4アール)。しかも地理的に台湾との最前線に位置することから、中国政府は温州に対して投資を控えてきた。そのため温州の人びとは、政府をあてにせず、独自の形で経済発展を成し遂げてきた。温州は一地方の名にすぎないが、この地に住む人の培ってきた独特な気質は、他の中国人と区別して「温州人」と呼ばれるほどに異彩を放っている。

 その最大の特徴は、商売のためなら、苦労を厭わずどこへでも出かけていくことだ。「中国のいかなる地方であれ、そこに商売人がたった1人しかいなくなったとしたら、その1人は必ずや温州人であろう」といわれるほどである。この傾向は、国内だけではなく海外でも同様である。1980年後半から、200万人以上の温州人がビジネスチャンスを求めて故郷を離れ、他の地方ないし異国の地に赴き、そこに長期居住している。その舞台は100近くの国・地域に広がり、年末になると、1ヶ月で海外からの送金が100億ドル以上にのぼる。

 やがて温州人が見せる商売のうまさと仕事にかける熱意、苦労に耐えきるその精神力に誰もが感服せずにはいられなくなった。いつの間にか、温州モデルは敬意をこめて語られるようになった。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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