17の大手金融機関が米住宅公社ファニーメイとフレディマックに販売した住宅ローン担保証券について、不適切な販売があったとして米連邦住宅金融局がいっせいに提訴した。2000億ドル近い販売額のうち、損害賠償はいくら求められるのか。また、投資銀行にまで拡大した住宅ローン問題はどこまで広がるのか。 

リーマンショックから3年を経てなお、いまだくすぶり続ける米国の住宅ローン問題。その波は、ローンを貸し出した銀行から証券化商品を作った投資銀行まで揺らし続けている
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「2000億ドルの訴訟って、いったいどういうことだ?」

 9月2日金曜日、明日からの3連休を控え閑散としていた米国金融市場は、突如わき起こった訴訟に揺れた。米国の住宅公社ファニーメイとフレディマックを管理監督している米連邦住宅金融局(以下、FHFA)が、バンク・オブ・アメリカ(以下、バンカメ)やJPモルガン3チェース、野村ホールディングスの米国法人など17に上る大手金融機関と複数の幹部社員をいっせいに提訴したからだ。

 その内容はこうだ。2005年から07年にかけてファニーメイとフレディマックに対し、17の金融機関が住宅ローン担保証券(RMBS)を組成して販売した。だが、そのRMBSを構成する住宅ローン債権について書かれた内容に虚偽があり、その説明を信じてRMBSを購入した2社は多大なる損害を被った。これは不適切な販売によるものであり、損害賠償を求めるというものだ。

 訴状によれば、その住宅ローン債権は17の金融機関が銀行から買い取ったものだが、買い取る際に「ウソが書いてあるとわかっていたはずだ」「きちんと資産査定していなかった疑いがある」と指摘されている。

 2社に対するRMBSの販売総額は約1962億ドル(約15兆1074億円)と巨額だ。しかも、FHFAが提出した訴状には具体的な損害賠償額の言及がない。そのため、販売額の約2000億ドルという数字が市場を駆け巡った。