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デジタル時代のIT投資効果をどう見極めるか

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第72回】 2017年9月15日
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投資分類の考え方は未だに有効

 さて、ここからは、従来から行われていたIT投資管理の考え方を踏まえて、デジタル化時代の攻めのIT投資を管理・評価する上で考慮しなければならない点について論じていく。

 ITRでは、IT投資を目的別に「競争優位」「業務遂行」「ITインフラ」「社会責任」の4つに分類し、目標設定や効果測定を行う手法を推奨し、多くの企業でIT投資管理の枠組み作りを支援してきた(図3)。これは、そもそも目的や性質の異なるさまざまなIT投資案件に対する効果を、一律の尺度や評価方法で管理・測定することに無理があるという発想に基づいたもので、投資分類ごとに評価項目や基準を変える取り組みであった。この考え方自体は、今でも変わっていない。

 しかし、その後製品・技術のコモディティ化、クラウドの台頭、昨今のデジタライゼーションの潮流などを受けて、IT投資の目的や対象領域は広がりを見せ、創出される効果も多様化・複雑化している。投資目的の4分類の考え方は現時点においても有効に機能するが、そこから生み出される価値や効果の見極めについては、より広範な視点が必要となっている。

効果をどのように捉え、分類するか

 以前は、社内業務を対象とした効率化や生産性の向上を目指したIT投資が多かったため、直接的・間接的なコスト削減や業務レベルの改善を効果として目標設定するIT投資案件が中心となっていた。従って、目標設定や効果測定の際も、コスト削減や業務効率化の評価指標やKPIを設定するのが一般的であった。

 しかし、昨今ではビジネスの最前線でのIT活用や、デジタル技術を活用した新規事業の推進などが期待されており、見込まれる効果も多様化している。そこでここではIT投資効果を10に分類し、 4つの投資目的別の分類との関係をあらためて整理した(図4)。投資分類ごとに目的が異なるため、期待される効果も違ってくるし、該当しない効果もある。

 攻めのIT投資は、投資目的としては「競争優位」を目指すものであり、その中でも昨今のデジタル技術を活用した業務改革やビジネス変革を目指したIT投資の多くは、売上増加への直接的または間接的な貢献や、企業の中長期的な付加価値向上に寄与する効果を生み出すことが期待されている。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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