作家であり、金融評論家、社会評論家と多彩な顔を持つ橘玲氏が自身の集大成ともいえる書籍『幸福の「資本」論』を発刊。よく語られるものの、実は非常にあいまいな概念だった「幸福な人生」について、“3つの資本”をキーとして定義づけ、「今の日本でいかに幸福に生きていくか?」を追求していく連載。今回は幸福と自己実現について考える。

人は人的資本から富を得て「自己実現」を求める

 小学生でもわかることですが、お金持ちになる方法は3つしかありません。

(1) 収入を増やす。
(2) 支出を減らす。
(3) 資産を上手に運用する。

 これを「お金持ちの方程式」として表わすと次のようになります。

 富=収入-支出+(資産×運用利回り)

 このうち(資産×運用利回り)が人生の土台における金融資産に相当しますが、ゼロ金利の世界では「お金が働いてくれない」のですから、経済的独立を達成できたとしても、そのステイタスを維持する(銀行という無料の貸金庫にお金を預けておく)程度の役割しか果たしてくれません。

 そうなると残る2つの要素、すなわち「収入を増やす」ことと「支出を減らす」ことが重要になります。

 ここでは収入を生み出す源泉となる人的資本について考えます。