通貨の信認に無頓着な
日銀の審議委員

 ところで、かつて典型的な中央銀行家といえば、通貨の信認に関して「そこまで心配しなくても」と端から揶揄されるほど、過度に神経質な人物像であったように思われる。ドイツの中央銀行幹部は今でもそうだ。

 同行がECB(欧州中央銀行)の超緩和策に極めて批判的なのは、マイナス金利の国債を購入して損失を発生させることは中央銀行の責任として「許容できない」という点から生じている。

 ドイツ政府は近年、財政黒字を継続しており、まさに「そこまで心配しなくても」という状況といえる。だが、裏返して言うと、それだけ財政規律や通貨の信認に神経質だからこそ、財政赤字を抱える先進国が多い中でドイツが財政黒字になっているともいえる。

 また、バーナンキ議長時代のFRBも、QE3(量的緩和策第三弾)の継続によって出口政策時に収益が悪化して、政府に利益を納付できなくなったり、赤字になったりする事態を恐れ、早めに「テーパリング」(国債などの証券購入の段階的縮減)に着手した(バーナンキ元議長の回顧録「行動する勇気」下巻より)。もし、そういった事態になった場合、議会が激怒し、FRBの独立性が剥奪されるリスクがあったためである。

 しかしながら日銀は、原田泰審議委員が今年6月の講演で、「中央銀行の損益が赤字かどうかを気にしてお札を使う人がいるでしょうか」と語るなど、極めて対照的だ。

 確かに、日銀が作り出した超低金利環境は、政府の利払い負担を抑制するという“痛み止め効果”を発揮している。その間に、財政再建や構造改革を進めるのであればいいが、実際はその強烈な“痛み止め効果”が、中央銀行幹部も含めて、日本中を“感覚麻痺”に陥れているように思われる。

「国債を永遠に保有させれば
政府の債務は大幅に減る」は間違い

 話を「統合政府」論の過ちに戻そう。

 第二に、日銀が持つ国債を無利子の永久国債に交換させるなどして、「日銀に、市中から買い取った国債を永遠に保有させれば、その分、政府の債務は大幅に減る」という考え方は誤解である。