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岸博幸のクリエイティブ国富論

ソーシャルメディアに身の安全すら託す
メキシコ人のマスコミ不信という教訓

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第157回】 2011年9月30日
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 SNSなどのソーシャルメディアは、中東諸国や中国などでは民主化を進めるための手段として不可欠なものとなっていますが、メキシコではまったく別の意味で不可欠なものとなっていることをご存知でしょうか。メキシコの地方に住む人にとって、サバイバルの手段として不可欠になっているのです。

メキシコでのソーシャルメディアの役割

 メキシコでは麻薬などの組織犯罪が多く、特に幾つかの地方では殺人事件やマフィアの抗争が日常茶飯事となるほどに、非常に危険な状態となっています。その中で、メキシコの全国メディアは当然そうした組織犯罪を報道していますが、ローカルメディアは詳細をあまり報道していません。

 昨年は、危険な地方の5つのローカル新聞が地元での麻薬戦争などについての報道を止めると宣言しました。理由は、記者や社員が命の危険にさらされるからです。実際、昨年は1年間で15のローカル新聞のオフィスが襲撃されたそうです。

 ちなみに、危険な地域では、ローカルメディアの報道の内容が反社会勢力に支配されることもあるようです。実際、メキシコ中部のサカテカス州では、記者が地元マフィアに誘拐された地元紙Imagenが、脅迫によって軍を批判する記事を書き続けました。また、スタッフが誘拐されたテレビ局Milenioも、マフィアが作った報道の一部を放送しました。

 また、幾つかの州では、州政府が地元ローカル新聞の広告スペースを買い上げた上で、もし政府に不利な報道をするならば買い上げを止めると新聞社に圧力をかけている例もあるようです。その結果かどうかは分かりませんが、例えばベラクルスでは、8月に水族館で爆弾が爆発したのに、地元メディアではこの事件がほとんど報道されなかったようです。

 こうなると、地方の住民は地元マスメディアを信頼できなくなります。事件が頻発して治安の面で不安が大きいのに、その真実が正しく報道されないのですから、当然でしょう。その結果、地域の住民は正しいニュースをネット、特にソーシャルメディアに求めるようになっているのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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