日本ではこの1ヵ月、政治は大きく動き、野田政権という党内融和を掲げた新しい政権が発足している。民主党政権になってわずか2年の間に3人目の首相交代である。
その最中、私は今年で7回目となった『北京-東京フォーラム』という民間対話を運営するために北京でその作業に追われていた。今回はこれまでとは少し話題を変えて、この日中対話の報告を通じて政府と民間の役割について、私なりの考えを説明してみたい。
共同世論調査でわかった
対日・対中感情は双方で悪化
この日本と中国の民間対話は、ちょうどその民主党代表選の候補者選びの最中、8月20日から3日間の日程で、北京で行われたものである。日本のNPOである言論NPOと中国の4大メディアの1つである中国日報社が事務局を務め、日本と中国を代表する有識者で構成されるそれぞれの実行委員会が共催する形をとっている。日本側は、かつての国連事務次長の明石康氏が実行委員長を務めている。
日本では、この代表選の報道にかき消され、メディアの扱いも小さかったため、対話の存在自体を知っている人もそう多くはないだろう。が、中国ではこうした日本での報道姿勢に疑問の声が出るほど、議論の内容や動向が連日、CCTVなどの中国のテレビや主要新聞で大きく取り上げられていた。
私たちのNPOは、このフォーラムに先立って、日本と中国の共同世論調査の結果を記者会見で公表している。
そこで明らかになったのは、昨年9月の尖閣諸島の漁船拿捕問題や日本の原発の震災事故時の対応が影響し、両国民の感情は再び大きく悪化したことである。尖閣問題では、日本政府の対応に反発して一時は7年前と同様に、中国では反日デモも広がった。