
AIの有用性に注目するのは、残念ながら犯罪者も同じだ。世界的なAIブームが起きる中、AIを使ったサイバー犯罪の脅威は高まる一方となっている。その現状をどう認識し、今後に備えていけばいいのか。中公新書ラクレ「匿名犯罪者」(櫻井裕一氏との共著)を今春刊行した、サイバーセキュリティ専門家の高野聖玄氏(STeam Research & Consultin取締役COO)に話を聞いた。(構成・聞き手/ライター 富岡悠希)
まるでSF映画の世界
AIとAIが戦うサイバー戦争
――サイバーセキュリティー分野において、AIの脅威は高まってきていますか?
サイバー犯罪において、日本語は日本人を守る一つの壁でした。英語だと使えた手口が、単純には使えないとなるからです。
ところが生成AIの誕生により、海外から日本人に対し、すごく自然な日本語で詐欺とかをやりやすくなってしまいました。これは個人が対象の領域ですが、まずは、この点がすごく大きいです。
国家レベルで現状、AIがどこまでサイバー戦争に使われているかの詳細は分かっていません。しかし、これからサイバー安全保障とAIの議論が、ほぼ同じものとして展開されていくのは必然です。

発展途上でどこまで進化するかは見通せませんが、AIが別のAIを生み出すレベルまで高まる可能性もあります。そうなると、サイバー安全保障は、AIとAIの戦いになってきます。
脅威がAIであれば、対策をするのもAIでしかない。人による処理だと全く太刀打ちできないでしょうから。究極的には、AI同士の精度の戦いになっていくでしょう。
――SF映画のような世界で怖くなります。
例えば今でもAIでサイバー攻撃のパターンの生成をすることもありますし、逆に防御側がAIで攻撃パターンを学習して守りに生かすこともあります。