佐藤 それがハーバード大学を卒業した後、教養として役に立つということですね。

ハウエル 日本史を学んだから、一流企業に就職できるとか、そういう直接的な効果があるとは思いません。ハーバード大学の教員が教えているのは、良きアメリカ人になるためだけではなく、良き地球市民になるための教養です。だからこそ、アメリカ以外の国の文化や歴史について学ぶことはとても大切なのです。

ハウエル教授が愛するサムライ

本連載の関連書籍「ハーバード日本史教室」(中公新書ラクレ)が10月6日発売!ハーバード大の教授10人のインタビューを通して、世界から見た日本の価値を再発見できる一冊

佐藤 ハウエル教授は、通史の授業で縄文時代から江戸時代までを担当していますが、学生は日本のサムライ(武士)に非常に興味を持っていると聞きました。武士の中では誰がいちばん人気ですか。

ハウエル 平清盛、源為朝、足利尊氏、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった有名な武将については詳しく話しますし、坂本龍馬についても教えています。誰がいちばん好きか、というのは学生に聞いたことはないですね。

佐藤 ハウエル教授が今、いちばん興味のある武士は誰ですか。

ハウエル 私のお気に入りは、幕末期の須坂藩(長野県須坂市にあった藩)の大名、堀直虎(1836~1868)です。同じ直虎でも、大河ドラマで話題の井伊直虎とは違って、日本ではあまり有名ではないかもしれませんね。

 堀直虎は国際派のユニークな大名で、彼の短い人生はドラマチックです。

 直虎は、1861年、20代で大名になりますが、外様大名であったにもかかわらず、譜代大名と同等の扱いを受けていたことがわかっています。須坂藩は1万石、13村という小さな藩ですから、これは異例のことです。

 彼は大名になってまもなく、藩政改革を断行します。須坂藩の借財がふくれ、わいろが横行しているのは家老らに責任があるとして、不服従の家老、藩士を徹底的に粛清して新体制をつくります。一説によれば処分した人数は合計30名を超えていたそうです。