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日本が世界に誇るアニメ産業の栄光の陰で――。
「年収100万円台」の生活苦に喘ぐアニメーターを救え!

木村明夫
2011年10月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
NPO法人アニメーター支援機構のHP。アニメーターの現状を理解しやすいよう、わかりやすく紹介されている。アニメ自習室の様子も見ることができるので、ぜひ問い合わせてみて欲しい。

 海外での日本のアニメに対する評価は大変高いものがあり、すでに日本文化の1つとして認知されているのは、ご存知のとおりである。しかしながら、アニメ作品の製作クレジットを見ていると、海外の会社も多く関わっていることが、よくわかる。

 アニメは原画までは日本で描かれるが、その後の動画や彩色は海外に発注されるからだ。多くの日本企業がそうであるように、アニメ制作の世界でも、海外へ発注して制作費を安く切り上げる生産流通システムが、当たり前のようになっているのが現状だ。

 では、コストカットが進むアニメ業界で働くアニメーターの月収はどのくらいなのか。実は、「20代で平均年収が100万円台」というから驚きだ。しかも、入社1年目の新人アニメーターの場合は、ほとんど年収100万円以下だという。

 これでは生活することができない。いくらアニメが好きで、才能もあり、やる気があったとしても、生活ができないのでは夢を諦めるしかないのが実情である。よほどの天才でその才能を新人の頃から開花させることができなければ、アニメーターの仕事だけで食べていくことは到底できない。

 そのため、3年以内に離職する人が9割に上るというのも納得のいく話である。普通の会社であれば、固定給があり福利厚生もしっかりと整っていなければならないが、アニメーターはほとんどがフリー契約のため、このような厳しい環境に置かれてしまうのだ。

 働いているにもかかわらず、仕送りなどの援助を実家から受けなければ、東京で生活をすることさえ難しい。いくら才能があったとしても、夢を諦めてしまう気持ちはよくわかる。

 そんななか、「ならば、将来あるアニメーター志望の若者を支援しよう」と活動を始めたのが、「NPO法人アニメーター支援機構」である。活動内容は、平均年収100万円台のアニメーターに上限60万円まで資金援助して、少しでも仕事に集中する環境を与えようというものだ。しかしながら、その対象となるには「NPO法人アニメーター支援機構」が主催する「新人アニメーター大賞」で受賞する必要がある。

 アニメーター支援活動は、ただ単に賞を設けて、受賞したアニメーターに金銭面で支援をすることだけではない。高い目的意識を持った人たちが自由に集まり、一緒に作画しながら交流できる「アニメ自習室」も提供している。作画練習に1人で没頭するのもよいが、仲間同士で評価し合い、技術を磨くこともよい機会だろうし、実際に絵を描きながら、お互いの作品を見せ合う場所などは、なかなかないだろう。

 有料ではあるが、『劇場版鋼の錬金術師 嘆きの丘〈ミロス〉の聖なる星』で作画監督を務めたアニメーターの霜山朋久さんによる講義もあり、これを通じてスキルアップできる機会も設けられている。

 支援金が集まれば、新人アニメーター大賞を受賞しなくても、援助できる人数を増やすことができる。だが、こういった活動や現状が認知されていないのも事実だ。アニメーター支援募金は、今回紹介した「NPO法人アニメーター支援機構」で随時募集しているので、興味のある人はぜひともご協力願いたい。

 現在、アニメーターに対して固定給を設け、福利厚生を整えている会社は、日本を代表するアニメ会社である「スタジオジブリ」、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で有名な「株式会社カラー」など、数社しかない。

 いくら出来高制で「実力の世界」とはいえ、労働者として最低賃金さえ適用されない現状そのものを見直す必要性を感じているのは、筆者だけではないはずだ。日本が世界に誇るアニメを、これからも世界に配信し続けていくために、「メイド・イン・ジャパン」の火を消して欲しくないものだ。

(木村明夫/5時から作家塾(R)


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