佐藤 授業では、日本の首相の靖国神社参拝問題についても取り上げたそうですね。中学校まで韓国で育ったジョンさんはどんな気持ちで講義を聞いていましたか。

ジョン 私は韓国で育ちましたから、この問題についても知っていましたし、日韓両国で物議を醸している理由もよくわかります。韓国人の中には今でも日本のことを好意的に思っていない人はたくさんいますが、靖国神社の参拝問題は、過去の遺恨が今も人々の間に残っていることを象徴していると思います。

佐藤 日本史の通史の授業「アジアの中の日本、世界の中の日本」を履修して、日本に対する見方は変わりましたか。

ジョン 日本が長い歴史の中で他国からの影響を受けながらも、ずっと独立を保ってきた国家であることに驚きました。古代から現代まで、日本と中国、韓国との間には友好と敵対を繰り返してきた歴史があります。明治維新後、日本はアジア初の立憲国家となり、欧米から様々な制度や文化を取り入れました。戦後は、アメリカの占領下でアメリカから直接的な影響を受けました。このような歴史の中で、日本は、ずっと独立国家を貫いてきたことを、今回、通史の授業を受けて、初めて学ぶことができました。

佐藤 卒業後は、歴史博物館のキュレーターになることをめざしているそうですが、日本史の授業はどのように役に立つと思いますか。

ジョン 授業の一環としてハーバード大学美術館を訪問し、貴重な浮世絵を見る機会がありましたが、「浮世絵は光に敏感なため、一度展示すると少なくとも4年間は暗室で保存しなくてはならない」と聞いてびっくりしました。こうした歴史的な資料や美術品に接した実体験は、直接、役に立つと思います。

 また、歴史を魅力的、かつ、論理的にどう伝えるか、という点でも非常に参考になりました。ゴードン教授とハウエル教授がどういうビジュアル資料を使っているか。3ヵ月間の講義内容をどう構成しているか。シラバスには何が書かれているか。こうしたことも歴史を伝える仕事をする上で、有益だったと思います。

 私自身、まだ卒業後の進路については迷っていて、博物館のキュレーターのほかにも、ロースクールへの進学や教育機関への就職なども検討しています。いずれにしても、この授業で学んだことを今後も生かしていきたいですね。

佐藤智恵(さとう・ちえ)
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。コロンビア大学経営大学院入学面接官、TBSテレビ番組審議会委員、日本ユニシス株式会社社外取締役。主な著者に『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、最新刊は『ハーバード日本史教室』。佐藤智恵オフィシャルサイトはこちら